この記事は、僕が本屋を辞めた「言い訳」でもある。
本屋で働いていた僕は、出版社で働く友人の給料を聞いて
「書店員の給料ってこんなに低いのか…」
と愕然とした。
なぜ書店員の給料は低いのか?
出版業界の構造を示しつつ、その実態について深堀りしていく。
記事の後半では、出版社の営業でメンタルを壊したことをキッカケに、僕がフリーランスになった経緯などを記している。
書店員の年収が低い理由は「業界の仕組み」を知ればわかる
なぜ書店員の年収は低いのか。
その理由を理解するためには、出版業界の仕組みを簡単に知っておく必要がある。
そもそも、出版業界にはおもに3つのプレイヤーが存在する。
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出版社
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取次
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書店
出版社が本を作り、取次が本を流通させ、書店が読者に本を販売する。
それが出版業界の基本的な構造である。
この出版業界の構造を踏まえれば、書店員の年収が低い理由が理解しやすくなる。
本が1冊売れたとき、利益はいくら?
書店員の給料・年収が低い要因を探るべく、まずは本が1冊売れるといくらの利益になるのかを考えてみる。
例えばここに、1冊1000円の本があるとする。1000円の本が売れたときの、各プレイヤーの利益を比較してみよう。
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出版社の取り分は価格の60〜70%程度→ 1000円の本が1冊売れるごとに600〜700円の利益
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取次の取り分は価格の8〜10%程度→ 1000円の本が1冊売れるごとに80〜100円の利益
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書店の取り分は価格の20〜25%程度→ 1000円の本が1冊売れるごとに200〜250円の利益
(この取り分は出版社や取次との契約、書店の規模によって変わり、業界内でも幅がある。ここではおおよその目安として紹介している)
こうしてみると、出版社が最も多くの利益を手にしていることがわかる。
少し話が脱線するが、書店よりも取次の方が利益率(%)が低いことも知っておきたい。
取次はおよそ10%の利益率だが、書店はおよそ20%前後の利益率を手にしている。
これだけ見ると、
「取次は書店よりも儲かっていないのか」
と思いたくなるが、取次というのは、本が売れる・売れないにかかわらず、本の流通を行うだけで手数料を得ることができる仕組みになっている。
だから、1冊あたりの利益率が低くても、大量の物流を扱うことでたくさんの収益をあげることができる。
もっと言えば、取次は個々の本が売れなくても利益を得られるというわけだ。
一方の書店は本が売れて初めて利益になる。売れないと全くお金にならないのだ。
売れないとお金にならないのはどんな商売でも同じだが、本の価格の低さと、書店の利益率の低さが書店員の年収・給料に影響しているのである。
本の価格を自由に決められない本屋の呪縛
また、書店は他の小売り業者のように自由に値段を決めることができないので、他の書店と差別化を図るのが大変むずかしい(再販売価格維持制度)。
だから、たとえば「うちの本屋はビジネス街でお金持ちのお客さんが多いから、値上げして利益を増やそう」といった価格戦略が取れない。
反対に、本を安売りして大量に売りさばくということもできないのだ。
1000円の本を1冊売って、200〜250円ほどの利益。
1日に100冊売っても2〜2.5万円ほどの利益にしかならない。
数字を見ると、かなり厳しいことがわかる。
当然、残った利益からテナント料や人件費などが発生するわけだから、現実はもっと厳しくなる。
実際、書店の営業利益率は平均で1%程度しか残らないとも言われている。
有名書店チェーンの平均給与・年収を比較すると
ここからは「書店員の給料・年収」を具体的な数字を挙げて紹介する。
まずは書店チェーンごとの給与をみていこう。
なお、以下のデータはWebサイトの求人情報等から抽出したものだが、給与水準は年によって改定されるため、あくまで参考値として見てほしい。
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紀伊國屋書店(2025年新卒採用時点)
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大卒 ¥220,000
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修士 ¥230,000
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賞与は業績により支給
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丸善&ジュンク堂書店
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総合職 ¥225,000
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専任職 ¥210,000
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時間外手当、通勤手当は別途支給
書店はチェーンによってバラつきがあるものの、一般的な業種の給与に比べるとかなり低い水準といえるだろう。
転職の口コミサイトでも、収入についてかなり厳しい書き込みが見受けられる。
大手の書店チェーンでは賞与や手当てが見込めるが、中小のチェーンでは望めない可能性が高い。
また、本部への異動や、書店内で役職(たとえば店長)になっても、残業代がつかなくなるケースも存在する。
以前、僕が勤めていた都内の某大型書店の管理職クラスの人が愚痴っていたのがいまでも忘れられない。
僕が本屋を辞めた理由
給与面ではかなり厳しい書店員という仕事。
今後の出版業界を考えると雇用面でも不安が残る。
僕は4年間ほど書店員をしてきたが、本屋の仕事が本当に好きだった。
本という物質そのものが好きだから、毎朝のように取次業者から届く段ボールを開梱する作業は至福の時間。
今日はどんな本が入っているだろうというワクワク感。
そして、本を棚に並べる時間も至福。
もはや仕事とは思えないほどに。
これほど好きな仕事にもかかわらず、本屋の仕事を辞めた。
なぜ辞めたのか?
