本屋の仕事が好きだった。
叶うものなら、もう一度、書店員として働きたいと思うほどに。
書店員の仕事内容については、じつはあまり知られていない部分が多いと思う。
実際に毎日どんな仕事をしているのかを、1日の流れに沿って紹介する。
なお、お店や店舗規模によって仕事内容には違いがあるため、あくまでも1つのモデルケースとして読んでほしい。
ワクワク感のある、入荷・検品
書店の1日は、その日に入ってきた本の検品と分類から始まる。
今日はどんな本が届いているのか。
個人的には、この作業がとても好きだ。
まずは、取次から届けられた送り状と荷物の数を照らし合わせ、本に間違いがないか確認する。
荷物を確認したあとは、書籍と雑誌を荷解きし、取次から送られてきた伝票に記載されたタイトル・価格・冊数を確認する。
商品が届いていなかったり、品違いや誤送があった場合は、取次へ連絡する。
検品後は、新刊・注文品・補充品・客注品などに仕分けを行い、店頭に並べる商品はジャンルごとに分ける。
雑誌の付録は、このタイミングでセット組みを行うか、レジの空き時間に作業することが多い。
腕が問われる、商品の陳列
書店員のセンスが問われるのが、本を並べる仕事である。
限られたスペースの中で、お客さんに興味を持ってもらえる売り場をつくらなければならない。
しかも、新刊は毎日のように入荷するため、常に工夫が求められる。
関連する本を近くに並べるのはもちろん、あえて対照的なテーマの本を隣に配置し、読者の興味を引くこともある。
どの本を、どこに、どのように並べるか。ここは書店員の腕の見せどころだ。
判断基準はいろいろあるが、一定期間(2週間程度)売れ行きが止まった商品は面陳や平積みから外し、返品に回すことも多い。
お店を左右する商品の発注業務
注文にもさまざまな種類がある。
基本的には書店員が「売れる」あるいは「売りたい」と判断した本を発注する。
そのほかにも、読者からの注文(客注)やフェア用商品の発注なども行う。
お店の立地、流行、文学賞の動向などを考慮しながら発注するため、この仕事は書店員の力量が大きく表れる部分でもある。
出版社の営業と掛け合って、店頭でどんなフェアを開催するか(どんな棚をつくるか)を考える。
個人的には、この時間も好きだった。
一方で、チェーンの書店によっては自動発注システムを採用している店舗もある。
売れ筋の本が、取次から自動的に入ってくる仕組みだ。
その場合は店舗ごとの発注権限がほとんどなく、書店員自身が発注する機会は少ない。
返品(返本)も大事な仕事
売り場を入れ替えた際、販売が難しいと判断した商品は取次へ返品する。
その際は、返品期限を過ぎていないか確認する必要がある。
多くの商品は返品了解が不要(フリー入帳)だが、出版社によっては返品期限を設けていることもある。
期限を過ぎた場合は、出版社へ返品了解(返品してもよいか確認すること)を取らなければならない。
返品できなくなった商品は不良在庫(書タレ)となるため、注意が必要である。
喜びが味わえる「接客の瞬間」
書店員の仕事はレジだけではない。
売り場でも、お客さんからの問い合わせに対応する。
探している本の在庫を確認し、どこに置いてあるかを素早く案内しなければならない。
お客さんから尋ねられた本をスムーズに見つけられたときの達成感は、何度経験しても気持ちがいい。
日頃から、売り場にある本をよく観察しておくのがコツ。
自分の担当ジャンルはもちろん、担当外のジャンルも意識して見ておく。
「そういえば、この本はあのあたりで見かけたな」
という感覚は、お客さんの対応をするうえでとても役に立つ。
店頭に在庫がなければ、取次や出版社から取り寄せを行う。
また、新聞広告や電車広告を見て来店する人も多いため、新刊情報や書評に掲載された本は常に頭に入れておく必要がある。
出版社と良い付き合いをするのも仕事
書店員には、基本的にそれぞれ担当ジャンルがある。
出版社の営業担当は、自社の本を案内するために担当書店員を訪問する。
書店員は店内業務の合間を縫って営業対応を行い、営業から新刊や売れ筋商品の説明を受ける。
必要だと判断すれば注文を出すが、提案をすべて受け入れていては売れない本ばかりが並んでしまう。
本を取捨選択する力、つまり「断る力」も重要な能力である。
一方で、発注の少ない書店には出版社の営業も来なくなりがちだ。
売れる店づくりをするには、多くの書店を見て回っている営業担当の情報は欠かせない。
実際、たくさん注文し、しっかり販売してくれる書店員のもとには、多くの出版社営業が集まる傾向がある。
このあたりの線引きはむずかしいが、出版営業を良きパートナーとできるかどうかも、書店員の腕の見せどころだ。
余談だが、僕が業界で働いていたころは、出版営業が書店員を飲み会に招いて、接待することも少なくなかった。
接待というと聞こえはよくないかもしれないが、お互いが良い仕事をするためのコミュニケーションの場でもある。
書店はどんな仕組みで本を仕入れているのか?
書店の本は、基本的に取次から仕入れる。
大まかには、
出版社 → 取次 → 書店
という流れで本は流れていく。
取次には、二代取次といわれる日販(日本出版販売)やトーハンがある。
過去に大阪屋、栗田出版販売などの取次もあったが、現在は楽天の子会社となり、楽天ブックスネットワーク株式会社として運営されている。
店頭で売れそうな本を取次へ発注し、在庫がない場合は出版社へ直接注文し、取次経由で書店へ届けてもらうこともある。
出版社が本を書店へ直接納品するケースもある
基本的には取次経由だが、まれに出版社が直接書店へ本を届けることがある。
これを「直納」と呼ぶ。
主に大型書店へ新刊を早く届けるために行われる方法である。
早く新刊を販売したい出版社が、取次を介さずに直納を書店に提案してくる場合も少なくない。
書店側としても、期待に応えようという気持ちになるので、自然と販売にも力が入る。
いま書店に求められていること
インターネットで本を購入する人が増え、電子書籍も普及したことで、全国の書店数は年々減少している。
そんな時代だからこそ、書店は実際に本を手に取って選べるという強みを最大限に生かす必要がある。
Amazonにも試し読み機能はあるが、本全体を自由に確認しながら選べるのは書店ならではの魅力だ。
インターネット検索は、目的の本を探すには非常に便利である。
しかし、検索する時点で自分の興味の範囲に限定されるため、どうしても同じようなジャンルばかり探してしまう。
一方、書店では普段読まないジャンルの本が自然と目に入り、新しい興味と出会うことができる。
これこそが、書店が最も力を入れるべき価値だと思う。
未知との出会いをどう演出するか。
それは、書店員の棚づくりや売り場づくりにかかっている。
目的の本を買う場所ではなく、新しい興味に出会う場所。
そんな売り場をつくることこそ、書店員という仕事の醍醐味なのかもしれない。
