洋書を読みたい人にとって最初のハードルになるのが、本選びです。
せっかくモチベーションが高くても、難しい本や興味が沸かない本を選んでしまうと、早々に挫折してしまいます。
いかにして読みやすくてわかりやすい英語で書かれた本を選ぶか?これが洋書多読成功の秘訣といっってもいいと思います。
さて、今回紹介するのは「辞書なしで読めて、面白い」という触れ込みで人気の1冊 “My Humorous Japan” という本です。
イギリス人が日本での出来事をユーモラスに描く
この本は、日本の大学で教授として働くイギリス人の著者が、日常の出来事や旅行先でのハプニングを綴ったエッセイです。
この本の最大の特徴は、わかりやすい英語で書かれていること。
NHKラジオ英語会話のテキストに連載され、ネイティブが書いた自然な英語で、しかもやさしくて辞書なしで読める、と大好評の珠玉のエッセイ。
NHKラジオ英語のテキストに掲載されていたということで、英語学習者向けに書かれているのがポイントです。
クスッと笑えるような出来事や「そんな人いるの?」という驚きの出来事など、読んでいて飽きない内容になっています。
英語教材にありがちな「無味乾燥な内容で読んでてつまらない」ということは一切ないので、多読用の本としてはピッタリです。
英語レベルは必ずしもやさしくはない
「辞書なしで読める」と聞くと、まったくの英語初学者でも読めるというイメージを持たれがちです。
実際のところ、この本は必ずしもやさしい英単語・英文法で書かれているわけではありません。
僕はこの本を読みながら、知らない英単語に印をつけていたのですが、だいたい1ページに2〜3個は未知の単語がありました(この数は、文章全体の意味を理解できるギリギリのラインだと思います)。
個々の英語レベルによって感じ方に違いがあるので断言はできませんが「洋書を読む最初の1冊としては適切ではないかも?」と感じました(少なくとも入門者向けではない)。
例として、僕が読んでいて難しいと感じた英単語をご紹介しておきますので、参考にしてみてください。
- vigorous 元気な、精力的な
- fatuously ぼんやりと、満足そうに
- gargle うがいする、がらがら声で言う
- mastery 熟達、精通
これらの英単語がわからなくても、推測読みによって全体の意味を理解できるのであれば問題はありません。
個人的には、むしろ推測読みの練習にもなったので、この本はレベル的にはちょうど良かったのかもしれません。
実際の英文についてはこのあとくわしく紹介しますので、それを読んだ上で使われている英語の難易度を判断していただくのが良いかと思います。
日本人なら共感しちゃう「あるある」が面白い
この本を読むと「やっぱり外国の人も同じように感じるんだな〜」と思うことが多々あります。
たとえば、渋谷駅で電車に乗るときに著者が目にした、いわば「あるある」的な内容が読んでて面白いです。
I remember one little old lady waiting on the platform of Shibuya station. (中略) She looked so weak and I wondered whether I should help her into the train.
However, when the doors opened, she took off like a guided missile throwing her bag on to the empty seats. If there had been a “Train Olympics”, she would have got a gold medal.
渋谷駅のホームで、電車を待っていたお年寄りの女性のことが忘れられません。彼女はすごくか弱く見えたので、私は「車に乗るのを手伝ったほうがいいだろうか」と考えていました。
しかし、電車のドアが開くと、彼女は空いている席に自分のバックを投げ出しながら、まるで誘導ミサイルのように勢いよく走り出したのです。もし「電車内オリンピック」が開催されたら、彼女は金メダルを取ることでしょう。
※日本語訳はこちらで作成
おそらく、誰もが一度は経験したことがあるであろう「電車に乗る時だけ強欲になるおばさん」について、ユーモア(皮肉?)を込めて書かれています。
僕も電車で座席につこうとしたら、直前でバックを置かれて阻止された経験があります。おばさん怖すぎ(笑)
ここでは話の内容にも注目しつつ、使われている英語についても少し触れておきたいと思います。
僕が最初に読んでわからなかったのが a guided missile (誘導ミサイル)でした。日本語では「ミサイル」ですが、missileの発音はmísəl(ミソル)なので要注意。
おばさんの行動を例えているだけなので意味がわからなくても文章は理解できますが、誘導ミサイルが理解できたほうが文章の面白さは格段にUPしますよね。
あと文法的なことでいうと、 she would have got a gold medal. のところで「もし〜だったら、…だろう」という仮定法過去完了が使われています。
慣れてしまえばどうってことないですが、仮定法過去完了を苦手とする人も多いので、洋書多読用の本選びにおいては要注意ポイントかなと思います。
あのマイケル・ジャクソンがまさかの逮捕…?
もうひとつ面白いエピソードを紹介します。「よくこんな凄いエピソード持ってるなぁ」とつくづく感心しちゃいます。
ある宝石店にあやしい格好をした男が現れて、高い宝石を購入しようとします。しかし、見た目からして明らかにそんなお金を持っているわけがない。不審に思った店員は、警察に通報します。
すぐに警察がやってきて、そのあやしい男を問い詰めると、その男は “I’m Michael Jackson.” と名乗ります。そして、おもむろにカツラをとると、なんと本物のマイケル・ジャクソンだったのです。
When I go shopping, I have to go in disguise with a wig and other accessories. If my fans recognized me, they would mob me and I couldn’t escape.
買い物に行くとき、カツラやアクセサリーを付けて変装しなくちゃいけないんだ。もし気づかれたら、ファンが殺到して逃げられなくなっちゃうからね。
※日本語訳はこちらで作成
有名人が変装をするのはよくある話かと思いますが、今回のマイケル・ジャクソンの変装はちょっとやりすぎだったんでしょうね(笑)
ここで使われている英語ですが、文法はそこまでむずかしくないかなと思います。
mob (群がる、殺到する)という動詞の意味がわからない人が多いと思いますが、そのあとで I couldn’t escape. と言っているので、「ファンに気づかれたら大変なんだな」と推測読みで意味を理解することが可能です。
推測読みの練習ができる良書でした
書評記事を書きながら思いましたが、この本は推測読みの練習にはピッタリでした。
もちろん「英語レベルによって感じ方は異なります」という注釈付きですが、僕としてはちょっとむずかしく感じるところもあったので、非常に読み応えがありました。
エッセイは洋書多読向きだと思います。エッセイは日常生活で起きた面白エピソードが中心なので、むずかしい単語や専門用語がほとんど出てきません。
なので「単語がわからなくて理解できない」ことが起きにくい。これがエッセイの良いところだと思います。
なお、この本は新書サイズで、本編は173ページなのでそこそこのボリュームがあります。
“My Humorous Japan” はシリーズで何冊か出版されているので、「もっと読みたい!」と思ったときに次の本があるというのも心強いと感じました。

