女性の推理小説作家といえば、イギリス出身のアガサ・クリスティが有名ですよね。
『そして誰もいなくなった』(原題 “And Then There Were None”)や、『オリエント急行殺人事件』(原題 “Murder on the Orient Express”)など、そうそうたる名作を生み出した作家です。
そんなアガサ・クリスティの生い立ちについて、わかりやすい英語で書かれた本が “Agatha Christie, Woman of Mystery”【Oxford Bookworms レベル2】です。
何気なく読み始めたのですが「アガサ・クリスティって、プライベートでも推理小説みたいな事件起こしてるじゃん…」と驚きの連続でした。
くわしくレビューしていきます。
アガサ・クリスティという名前の由来
芸能人であれ、作家であれ、名前の響きというのは非常に重要ですよね。どんなに有能であっても、名前がイマイチでは人気は出にくいでしょう。米津玄師があそこまで売れたのは、名前の特異性も大きく関係しているはずです(しかも本名)。
その点でいうと、アガサ・クリスティは語感もよく、口に出して言いたくなるような素敵な名前です。
旧姓はアガサ・ミラー(正式名はアガサ・メアリ・クラリッサ・ミラー)という名前で、アーチボルド・クリスティという男性と結婚したことで、アガサ・クリスティという名前になりました。つまり、ペンネームではなく、ばっちり本名ということですね。
しかし、夫との離婚によって、アガサ・クリスティという名前が失われる危機がおとずれます。
本書では以下のように書かれています。
‘I don’t want to use the name “Christie” again,’ Agatha told her publishers. ‘I will think of another name to use.’
‘But you can’t change it now,’ they said. ‘Your readers know “Agatha Christie” – that’s why they buy your books. If you change your name, nobody will know who you are!’
つまり、アガサ自身は「この名前を名乗るのはイヤだ。名前を変えたい」と出版社にお願いするわけです。そりゃそうですよね、別れた夫の名前を名乗るなんてイヤに決まってます(しかも、夫は不倫してた)。
もしここで出版社が改名を受け入れていたら、アガサ・クリスティという名前は消え、他の名前になっていたということになります。
後からなのでいくらでも言えますが、アガサ・クリスティという名前でなかったら、後世にまで名を残す作家にはなってなかったかもしれませんよね。
病院の薬局での経験を推理小説に活かす
1914年からイギリスとドイツ間で戦争がおこなわれるのですが、その際、アガサは病院の薬局ではたらくことになります。
薬局はアガサにとって、うってつけの職場でした。なぜなら、薬や毒の知識が手に入るから。
これだけ聞くと「ヤバい殺人犯」の計画を連想してしまいますが、もちろんアガサは推理小説のために調剤の知識を活かしました。
She knew a lot about poisons now. She knew which poisons worked quickly, and which worked slowly. She knew how much to give, and what different poisons smelt and tasted like. She knew how people died from poisons – did their faces turn blue? Did they die in their sleep, or die screaming in pain? A good detective – and a good writer of detective stories – must know these things.
即効性がある毒は?どんな臭い?毒にかかると顔が青ざめるのか?痛みで叫びながら死ぬのか?
優れた探偵、優れた推理小説作家はこういった毒の知識が必要不可欠というわけです。
薬や毒の描写や知識がリアルだと、読者も作品にグッと入り込めますからね。
アガサの名作は、調剤薬局での経験があってこそ生まれたといっても過言ではないでしょう(この知識が、本当の殺人に向かなくて良かった)。
行方不明になり、懸賞金がかけられるアガサ
アガサ・クリスティは私生活においても、推理小説さながらの事件を起こします。
とあることがキッカケで、彼女は突然、行方をくらましてしまうのです。
行方不明になった彼女をめぐって、警察や新聞社も大騒ぎとなり、大々的な捜索が行われることになります。
「なぜ彼女は消えてしまったのか?」という要素がもはやリアル謎解きなのですが、捜索の過程で出てくる「アガサによって乗り捨てられた車」「脱ぎかけのドレス」などの”手がかり”が見つかります。これが、もはや1つの作品にすら思えてくるほどのちょっとした事件なのです。
行方不明になった原因や、その結末はぜひ本書を読んで欲しいのですが、作品のみならず、プライベートにおいても謎を提供するあたり、本物のスターだなと感じずにはいられません(もちろん、意図してやったものではないだろうけど)。
英語の難易度と読みやすさについて
この本は、アガサ・クリスティの生涯が読みやすい英語で書かれている伝記です。
【Oxford Bookworms レベル2】なので、出てくる単語もわかりやすく、文法も難しさはあまり感じませんでした。洋書多読にはうってつけです。
単語数 | レベル目安(英検) | レベル目安(TOEIC) | |
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Starter | 250 語 | ー | ー |
Stage 1 | 400 語 | 英検3〜5級 | 250〜380点 |
Stage 2 | 700 語 | 英検準2級 | 310〜400点 |
Stage 3 | 1,000 語 | 英検2級 | 380〜560点 |
Stage 4 | 1,400 語 | 英検準1級 | 420〜700点 |
Stage 5 | 1,800 語 | 英検準1級 | 520〜750点 |
Stage 6 | 2,500 語 | 英検1級 | 800点以上 |
イギリスの地名が多く出てくるので、そこだけ意識しながら読んだほうが理解が深まると思います。
あとは関係代名詞もふつうに出てくるので、そのあたりの読解力を鍛えるのにもいいかもしれません。
海外文学が好きな人、推理小説が好きな人にはピッタリの1冊だと思います。ぜひチェックしてみてください。
Kindleなら試し読みもできるので、まずは英語力や内容を見てみるのが良いと思います。