大人になったせいか、昔に比べて「実話」にもとづいたストーリーを好んで読むようになりました。
事実にもとづいた小説とかって、パンチが弱くなりがちなんですが、今日読んだ本は凄かった。
「これ創作だよね?」と思って、あとで調べてみたらまさかの実話。それくらいインパクトがある作品”The Death of Karen Silkwood”をご紹介します。
“The Death of Karen Silkwood”のあらすじ
主人公のカレンは、核燃料の工場で働く仕事を見つけます。前の仕事に比べて給料が良かったのが最大の理由でした。
ただ、核燃料の工場には危険がいっぱいで、退勤前のテストで少しでも放射能が体に残っていたら、除染(超痛いシャワー)を浴びなければいけません。
仕事をしていくうちに、彼女は工場の安全管理体制に疑問をいだきます。従業員みんなが安全に仕事ができるように改善するため、彼女は労働員会の委員に立候補し、見事当選を果たします。
労働組合の委員になり、安全管理について調べていくなかで、彼女は重大な事実を発見します。
なんと、工場の責任者が安全状況を記録するための写真を捏造していたのです。
つまり、本当は安全ではない工場内の写真を、安全に見える写真に差し替えていたのです。
それを知った彼女は、本当の写真を手に入れるため、写真がある場所へ盗みに入ります。
その証拠を新聞紙ニューヨーク・タイムズの記者に暴露すれば、工場の安全管理は大きく見直される。彼女はそう考えたのでした。
彼女は無事に証拠となる写真を手に入れます。しかし、その写真が記者の手に渡ることはありませんでした。
なぜなら、彼女は記者とのミーティングに向かう途中で、自分が運転する車で交通事故を起こして死んでしまうからです。
彼女の死後、証拠となる写真が入った茶色い封筒は見つかっていません。
交通事故で死ぬシーンを最初と最後に描くという手法
この本は、冒頭でカレンが交通事故で死んでしまうシーンから始まります。
つまり、いきなり大きな結末を伝えて、そのあとに交通事故に至る前での流れで話が進んでいきます。
なぜ彼女が死んでしまったのか?という疑問を抱えたまま読み進めていくことになるので、読み始めたら止まりませんでした。
そのあたりの、好奇心を持たせたまま読み進めさせる構成がとても上手だなと思います。
この話は、実話をもとに書かれています。つまり、核燃料工場であった不正も事実だし、彼女が謎の死を遂げたことも事実です。
事実ということもあって、小説みたいな「キレイな謎解き」で終わる構成になっていません。
最終的になぜ彼女が死んでしまったのか?という理由はわからずに終わってしまうので、たしかにモヤモヤは残ります。
ただ、不完全な終わり方のおかげで「これが事実なんだ…」という妙な説得力がありました。
核燃料に関係する英単語が多いので、少し引っかかる
この作品は核燃料工場が舞台になっていますから、それに関する英単語がわりと多く登場します。
なので、ふだん触れることのない英単語が並んでいるせいで、読み進めるのに少し引っかかるかもしれません。たとえば以下のような単語です。
- fuel rods … 燃料棒
- radioactive dust … 放射性降下物
- uranium … ウラン
これらの単語は作品のなかでたびたび登場します。なので、多読の原則とも言われる「辞書を引かない」という選択をするよりも、最初にちゃんと調べてしまったほうがいいかもしれません。
その英単語が物語でどれくらいの頻度で出てくるかは読み進めないとわからない部分なので、判断がむずかしいところではありますが。
この作品はOxford Bookwormsのレベル2ですが、そこまで難しさは感じませんでした。内容がおもしろくて、英語の勉強を忘れて読み進められたので良かったです。
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