「名前は知ってるけど、具体的に何をやった偉人なのかはよく知らない…」というのはよくある話ですが、その最たる例がエジソンだと思います。
エジソンと言えば電球や蓄音機を発明した人として有名ですが、それ以外のことについては知らない人も多いはずです。
今回、初心者向けの洋書多読でおなじみのラダーシリーズで『エジソン・ストーリー』”The Thomas Edison Story” を読んでみたのでレビューします。
何度も死にかけたエジソン少年
エジソンは少年時代に何度か死にかけています。本書で紹介されているだけでも3回は死にかけているのですが、その原因の一つにエジソンが少年時代に持っていた「強い好奇心」があります。
少年時代のエジソンはとにかく好奇心が旺盛で、興味が持ったことに対して一直線になってしまい、周りが見えなくなってしまうことがよくあったようです。
たとえば、アメリカには穀物を保管する大きな倉庫があります。外見はふつうの建物に見えるのですが、中には大量の小麦などが保管されており非常に危険な場所です。
少年エジソンは「中はいったいどうなっているんだろう?」と興味をいだき、一番上までよじ登り、中を覗き込みます。そして、誤って転落してしまい、溺れ死にかけます。
Thomas fell into the grain, and it was like falling into the ocean. He could not get out, and there was no air.
大量の穀物の中に落ちることは、大海に放り出されるのと同じことというわけです。埋もれてしまえば、呼吸ができなくなります。
これはエジソンの好奇心が凄かったことをよく物語っているシーンです。
幸いなことに、叫び声に気づいた人がなんとかエジソンを助け出し、命拾いしました。
その他にも、父親の納屋(barn)を火事で燃やしてしまったり、猩紅熱(しょうこうねつ、scarlet fever)にかかって学校に行けないほどの重病を患ったり、列車内で化学物質を誤ってバラ撒いて火災が発生し、死にかけてたりしています。
僕たちはエジソンが偉大な功績を残しているのを知っているから「あのエジソンでも、こんなミスがあったんだなぁ」なんてポジティブに捉えられますが、当時からすればとんでもないトラブルメーカーであり、ただの厄介者としか思われていなかったはずです。
エジソンが若くして死んでいたら…
これらの”死にかけたストーリー”を目の当たりにすると「もしこのときエジソンが若くして死んでいたら…」と夢想せずにはいられません。「発明スピードはもっと遅れて、いまほど便利な世の中ではなかったのかもな…」と考えてしまいます。
僕は同じような感情を、iPhoneを生んだスティーブ・ジョブズに対しても抱いてしまいます。
ジョブズは2011年に56歳という若さで亡くなっているのですが(死因は膵臓がんの転移による呼吸停止)、もし2021年の現在まで生きていたら66歳。十分、現役で働ける年齢です。
「ジョブズが生きていたら、Apple という会社はもっと飛躍していて、世界は今よりもスゴい体験で溢れていたに違いない…!」という空想を禁じえません。
要するに、エジソンというのは現代でいうところのスティーブ・ジョブズのような存在だったと思うんですよね。誰も想像しなかったことを形にして、世界を便利な世の中に変えていくところに共通点があるんじゃないかなと、本を読んでて感じました。
1人で黙々と実験する…というイメージは間違い
これは僕だけじゃないと思うのですが、アインシュタインやエジソンみたいな天才って、1人で実験室にこもって黙々と作業をして発明を完成させるっていうイメージが強いですよね。
たしかにエジソンにもそういう一面はありましたが、自分の会社を興してからは多くの従業員を雇って、組織として多くの発明を生み出していました(ちなみに、アメリカの超有名企業、ゼネラル・エレクトリック[GE]はエジソンがつくった会社)。
現在では組織というチームで何かを生み出すのは当たり前に思えますが、当時としては画期的だったようです。
「エジソンは電球や蓄音機や映写機などを発明したが、チームで開発するというスタイルを生み出したのは、彼の発明品そのものより、もっと大きな発明だったのかもしれない」と本書には書かれています。
Before Edison, scientists and inventors did not usually work at companies.
Scientists did not think much about business. Inventors thought about business, but they usually worked alone, and they worked in their homes or a small office.
But Edison knew that it was better for inventors, scientists, engineers and mechanics to work in teams.
ざっくり訳すと「科学者や発明家はそれぞれが独立して働いていたけど、チームを組んでお互いが協力しあうことで弱みを補うことができ、ビジネスにも結びつけやすくなった」ということです。
これって言葉でいうのは簡単だけど、誰にでもできることじゃないですよね。なぜなら、個性の強い個人を集めてチームを組むのは相性の問題もあるし、さらにいえば「利益の取り分はどうするのか?」という問題も出てくるからです。
こうした難題があるにもかかわらず、チームとしての発明や事業を成し遂げることができたのは、ひとえにエジソンの人間性と圧倒的な才能が周りの人を惹きつけた結果だろうというのは容易に想像ができます。
これまた余談ですが、才能や行動力で周りの人を惹きつけるあたりはスティーブ・ジョブズにも共通する部分があります。
スティーブ・ジョブズはじつは癇癪持ちで、少しでも納得できないことがあると周りの人に当たり散らすこともしばしばあったようです。
性格に難があるにもかかわらず、これほどまでに成功を収めたのは、彼の才能と行動力がすべてのマイナスを凌駕したからだと思うんですよね。
エジソンが性格難だったというエピソードは書いてませんが、周りの人を惹きつけえる力というのはジョブズと共通しているように感じました。
レベル1だが、英単語は意外とむずかしい
少しだけ、この本の難易度や読みやすさについても紹介しておきたいと思います。
この本はラダーシリーズのレベル1です。つまり、英語レベル的にいえば1番かんたんなランクにあたります。
ラダーシリーズ | レベル1 | レベル2 | レベル3 | レベル4 | レベル5 |
---|---|---|---|---|---|
使用語彙数 | 1000語 | 1300語 | 1600語 | 2000語 | 制限なし |
TOEICスコア | 300〜400点 | 400〜500点 | 500〜600点 | 600〜700点 | 700点以上 |
英検 | 4級 | 3級 | 準2級 | 2級 | 準1級 |
iTEP | 0.0〜1.0 | 10〜2.0 | 2.0〜3.0 | 3.0〜4.0 | 4.0以上 |
しかし、読んでみて「レベル表記よりむずかしいかも」と感じました。
文法自体はやさしく書かれていますが、いかんせん英単語がむずかしめです。
エジソンの発明について説明する都合上、どうしても専門用語が避けられないというのがむずかしさの要因になっているんだと思います。
たとえば、こんな英単語が出てきます。
- phonograph 蓄音機
- phosphorus リン
- direct current 直流
- alternating current 交流
- kinetograph 映画撮影用カメラ
- telegraph 電信、電報
一応、本文が始まるまでに【読む前に知っておきたい単語リスト】というのが付いていますし、巻末にも英単語訳のリストが付いています。
とはいえ、馴染みの薄い単語が続々と出てくるのは確かなので、そのたびに意味をチェックする必要があり、読書を中断せざるを得ません。
レベル1のラダーシリーズではありますが「読むスピードは他のレベル1作品に比べると遅くなりそう」というのが個人的な感想です。
やや英単語のレベルが高いという注意点はありますが、内容的には申し分ないと思います。
エジソンの面白いエピソードが盛りだくさんなので、読んでいて飽きません。大満足です。
この本を読むとエジソンのことが好きになるし「こういう発明の積み重ねがあってこそ、今の世の中が成り立ってるんだな」と感慨深いものがあったりします。