洋書で『動物農場』を読んでみた。豚が独裁者の世界が驚異すぎる【Penguin Readers “Animal Farm”】

George Orwell

※この記事はプロモーションを含みます

ジョージ・オーウェルの作品が以前から気になってたんですが、洋書で読むにはハードルが高い。

なんせ分厚いし、英単語も難しめ…。

そんな折に本屋で発見したのが ペンギンリーダーズ の “Animal Farm”(動物農場) でした。

軽い気持ちで読み始めたんですが、予想以上に学びが大きかったので紹介させてください。

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このブログの運営者
あゆむ

書店員→出版社→フリーランス10年目丨TOEIC450→830丨英検1級合格&900点超えを目指して勉強中丨30代男丨夫婦+保護猫で生活丨RIZINとUFC観てます

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動物が反乱を起こして、牧場を支配するお話

『動物農場』という作品をざっくり説明すると、劣悪な環境で飼育される動物たちが反乱を起こし、牧場(農場)を支配するというお話です。

20世紀前半の全体主義やスターリン主義への批判が込められた、いわゆる寓話といわれています。

この作品は動物を擬人化した物語なので、ともすれば「子どもが読むやつ」と思われがちです。

僕も最初はちょっとなめてたんですが、読み終えてみると教訓というか、学びが多くて驚きました。

動物が反乱を起こして、自分たちで農場を運営することになってハッピーエンド…なわけではありません。

少しずつ動物たちのなかでも階級や貧富の差が生まれ始め、やがては独裁が始まってしまうのです。

読み書き能力や知識の差が、貧富の差につながっていく様が、動物を比喩に使いながら巧みに描かれています。

豚が最も賢い世界

本作品にはいろんな動物が登場するのですが、メインとなるのは豚と馬です。

動物農場においては豚が最も賢い動物として位置づけられており、反乱を起こそうと考えるのも豚です。

最初に登場するのが Major という長老的な存在の豚です。 Major は人間に搾取される日々に終止符を打つため、仲間である動物たちに語りかけます。

Our problems come from people, and without them we can be rich and free. So we must work night and day to start a rebellion.

我々の問題は人間によるものであり、人間がいなければ私たちは豊かで自由になれる。だから私たちは反乱を始めるために日夜、努力しなければいけない。

この呼びかけに、農場の動物たちは賛同します。

Major は高齢だったのですぐに死んでしまうのですが、その後反乱は成功し、動物たちは晴れて自分たちで農場を運営することになるのです。

反乱が成功したあと、「7つの決まりごと」が農場内に掲示されます。

  • The Seven Commandments (7つの決まりごと)
  • 1. Anything on two legs is an enemy.
  • 2. Anything on four legs, or with wings, is a friend.
  • 3. Animals must not wear clothes.
  • 4. Animals must not sleep in a bed.
  • 5. Animals must not drink alcohol.
  • 6. Animals must not kill other animals.
  • 7. All animals are equal.

掲げられたルールの内容がどうこうよりも、ここでは「決められたルールがある、という事実」が重要です。

というのも、のちのち独裁者として君臨する豚が、これらのルールをことごとく破っていくからです。

ルールを破るというハッキリとした展開があることで、独裁者の悪事が際立つように作り込まれているんですね。

2匹の豚が対立し、やがて独裁者が生まれる

長老の Major が去ったあと、動物たちのリーダーとなったのが Napoleon と Snowball という2匹の豚です。

当初は上手くやっていたのですが、風車の建設を巡って意見が対立。風車を建てるべきという Snowball に対して、食料生産を優先させるべきだとNapoleonは主張します。

演説によって多くの動物たちの支持を得ていた Snowball ですが、秘密警察的な立場として登場する9匹の犬に襲撃され、農場を追われてしまいます。

なにを隠そう、この9匹の犬は Napoleon が育てたものです。そして、これら9匹の犬は、あとの物語でも他の動物たちから恐れられる存在として君臨し続けます(ちなみに、この9匹の犬の登場にも見事な伏線があるのですが、ここでは割愛)。

Snowball が去ったあと、日に日に Napoleon の独裁色は強まっていきます。

当初、動物は「お酒は飲まない」「ベッドでは寝ない」「人間の家には住まない」「洋服は着ない」といった7つのルールがあったはずですが、Napoleon はこれらのルールを破ったり、都合の良いように改変していきます。

僕は読みながら「独裁者が支配を続けるバッドエンドか、動物たちが民主主義を取り戻すハッピーエンドか」と予想しながら読んでましたが、結末はなんとも不気味。そして、見事。

ぜひ最後まで読んでみて体感してほしいです。

「クーデターに成功した英雄が独裁者に」というあるある

“Animal Farm” は1945年発表という古い作品ですが、これだけの年月が経っても読まれ続けている理由がわかりました。

というのも、動物たちを人に見立てて描くことで、貧富の差や独裁者が生まれていく様が非常によく伝わるからです。

さきほど「7つの決まりごと」を取り上げましたが、これらのルールをひとつずつ破ったり改変したりするところに、良きリーダーが悪い独裁者に変貌してしまう過程が上手く表されています。

「革命の英雄が、やがて独裁者に」というのは、実際の歴史でも見られます。古い例だとイングランドのクロムウェルがいますし、リビアのカダフィ大佐なども同様です。

権力を手に入れると何もかも自分の良いように解釈をしてルールを変えようとする。人間の心理や行動が、”Animal Farm”では寓話的にわかりやすく描かれています。

ちなみに、本書はPenguin Readers のレベル3に位置しており、比較的読みやすい英語で書かれています。

本編は約70ページと短いですが「この短い紙幅でここまで濃い内容にしたのは見事だなぁ」と、読み終えて関心しちゃいました。

小説本のレビュー
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