日本で平和に生活していると意識されにくいですが、世界には未だに男女差別が数多く存在します。
女性が会社で働き、自由に暮らすのが当たり前になりつつありますが、それが定着をはじめたのは、ここ50年ほど。つまり、男女平等の歴史はまだまだ浅いということです。
今回は男女の性差別と戦ってきた数々の女性たちの歴史がわかる1冊 “Women Who Changed the World” という本をご紹介します。
女性に対する「強制摂食」が衝撃的すぎる
まず最初に紹介したいのが、19世紀末から20世紀初頭にかけてイギリスで起きた、女性参政権を求める運動です。
この運動に関わった女性は、自分たちのことを「サフラジェット」(Suffragettes)と呼び、彼女たちの活動は器物損壊やハンガー・ストライキ(飢餓によるストライキ)を伴う過激なものでした。
この本では、その中心人物としてエメリン・パンクハースト(Emmeline Pankhurst)という女性が紹介されています。
サフラジェットによる運動は戦闘的な手法がかなり多く、当時は相当な議論が巻き起こりました。
郵便ポストに放火したり、爆弾を仕掛けたりといった過激なものが目を引きますが、僕が個人的に衝撃を受けたのは刑務所内での「強制摂食」でした。
器物損壊をすれば当然捕まるわけですが、サフラジェットもたびたび刑務所に収監されています。
収監された女性の多くは、いわゆる「ハンガー・ストライキ」(断食によって抗議の意を示すもの)を採用するようになりました。
食べなければ餓死してしまいますし、刑務所内で死なれてしまうとその責任は刑務所側が負わなければいけなくなります。
そこで刑務所側は、チューブで食事を無理やり摂らせる強制摂食を行うようになったのです。
From 1912 to 1913, she was in prison twelve times. She was very brave and she knew that women had to win this fight. She even stopped eating.
Sometimes, the police forced her to eat, which was very painful. Sometimes, the suffragettes almost died from not eating, but still they continued to fight.
1912年から1913年にかけて、エメリン・パンクハーストは12回刑務所に入った。彼女はとても勇敢で、この戦いに勝たなければならないことをわかっていた。彼女は食事を取ることさえも拒否した。
時おり、警察官は彼女に無理やり食事を食べさせようとしたが、それは大変な苦痛を伴うものだった。サフラジェットは食事を摂らず死ぬ寸前だったが、それでも戦い続けた。
強制摂食とは無理やり食事を摂らせる行為ですから、サフラジェットは縛られたり押さえつけられたりしながら鼻チューブ、胃チューブで食事を摂らされました。
文字にするとそのインパクトが薄れがちですが、精神的および肉体的なダメージは相当なものだったようです。
サフラジェットの運動は1914年の第一次世界大戦勃発によって一時的に中断されます。
1918年からイギリスでは財産に関する特定の条件に満たした30歳以上のイギリス女性が投票権を獲得し、1928年には21歳以上の全ての女性に参政権が拡大されました。
本書ではサフラジェットの活動が大きく貢献したとされていますが、歴史家の間ではサフラジェットの戦闘的な手法がどれほどの効果を上げたのか疑問視する声もあるようです。
サフラジェットの運動の是非はともかく、こうした女性たちの運動があったからこそ、男女平等の機運が高まったのは間違いないでしょう。
権利を求めてここまで強い意志を持って活動していた女性たちがいた、という事実には本当に驚かされます。
夫の許可なしには働けない妻
世界中で女性の参政権を認める動きが広がりつつありましたが、実際の生活においてはまだまだ女性の権利というものは認められていませんでした。
たとえば、家庭内における女性の立場や権利はほとんどありませんでした。
All over the world, feminists fought to change family laws that gave husbands control over their wives. In many European countries, married women still had very few rights.
For example, in France, married women could not work if their husbands did not agree to it. That law only changed in 1965.
夫が妻をコントロールできるという家族法を変えるため、世界中のフェミニストが戦いました。ヨーロッパの国々では、結婚した女性の権利は未だにほとんどなかったのです。
たとえば、フランスでは結婚した女性は夫の許可なしに働くことはできませんでした。その法律が変わったのは1965年のことです。
そもそも「夫が妻をコントロールできる(権利の与奪を決められる)」家族法という法律があったことに驚きを隠せません。
そして、1965年というわりと最近まで女性が夫の許可なしに働けなかったという事実にも衝撃を受けました。
女性の権利が確立しはじめたのは、本当に最近のことなんだなと考えさせられます。
関係代名詞が使われている文章
少しだけ、ここで使われている英語について解説しておきたいと思います。
feminists fought to change family laws that gave husbands control over their wives. という文がありますが、ここでは関係代名詞が使われています。
that 以下の文で、直前の laws を説明していることに注目しましょう。
そこを理解できれば、この文の主語が feminists、動詞が fought (fight の過去形)であることがわかるので、すっきり訳せるようになるはずです。
女性の権利について知らないことが多すぎる
この本を読んで、女性の権利について知らないことだらけだなと改めて痛感させられました。
男として生まれた僕は、正直いって女性の権利について深く考えたことはありませんでした。そして、現代に生まれた女性なら、特に不自由なく生活できている人が多いと思います。
しかし、現在に至る過程で、多くの人が女性の権利を得るために戦ってきたという事実は知っておくべきだと思いました。
ふだんの何気ない発言や価値観が女性の権利を侵害している可能性もあるので、男性こそ女性の権利について深く知っておくべきだと思います。
やさしい英語で女性の権利について学べる良書ですので、ぜひ一度手にとってみてください。
ちなみに、本書はPenguin Readersのレベル4 (見出し語:1200)で、本編は69ページと薄めです。
英文法については関係代名詞が頻出するので、文法に不安がある人は注意したほうがいいかもしれません。
英単語については聞き慣れない人物名が多いので要注意ですが、専門用語などは使われてないのでそこまで難しく感じませんでした。