本の広告には様々なものがありますが、特に見られる広告が『〇〇万部突破!』という広告ですよね。
この、部数はいったい何を基準にしているのでしょうか?
「発行部数」と「実売部数」についてくわしく解説していきます。
「発行部数」は実際に売れた本の数ではない!
『〇〇万部突破!』という広告は、一見すると、その数だけ本が売れたんだ(実売部数)と考えてしまいがちです。
しかし、実際のところ、『〇〇万部突破!』という表記は「発行部数」を指す言葉に過ぎません。
ですから、『〇〇万部突破!』という広告を見て「こんなに売れてる本なら面白いに違いない!」と思うのは、正確ではありません。
もちろん、それだけ発行部数を増やしているわけなので、売れている事には違いありませんが、この『〇〇万部突破!』が実売部数なのか発行部数なのかをきちんと区別して考える必要があります。
なぜ「発行部数」であらわすのか?
では、なぜ『〇〇万部突破!』は「実売部数」ではなく、「発行部数」で表すのでしょうか?
それはズバリ、発行部数の方が実売部数より数字が大きく表現できるからです。
当然の話ではありますが、本は必ず【実売部数<発行部数】となります。
つまり、本は売れた数よりも発行している数の方が絶対に大きくなるので、発行部数を使った方が広告にした際にインパクトを与える事があります。
また、「実売部数」を集計するのが実務的に難しいという事情もあります。
本は発行して、本屋さんに並べるだけでは売れたことになりません。お客さんに本を買ってもらって初めて、売れたことになります。
本屋さんの棚に並んでいるのは何冊なのか、また、本が返品されて倉庫に何冊あるのかを集計するのはハードルが高いのが現状です。
ですから、『〇〇万部突破!』という広告は【発行部数】をもとに表記しているのですね。
映画化やドラマ化などは増刷で発行部数アップ!
また、ドラマの原作になったりテレビで話題になった本はそれを見越して発行部数を多く増やすこともあります。
しかし、その発行した本がすべて売れればいいのですが、流行が去って売れ残ってしまった…なんてこともよく聞く話。
たとえばテレビで大々的に取り上げられて「この本は売れるで!」と思って5万部の増刷をかけたのに、ふたを開けてみれば1万部しか売れなかったので、残りは断裁…ということもけっこうあります。
その場合でも『〇〇万部突破!』は発行部数でカウントしていいので、実際に売れていなくても、より多く売れているように見せることが可能なのです。
ちなみに、本を発行しすぎて売れ残りが大量に発生してしまうこともあります。それがあまりに大規模だと「ベストセラー倒産」と言われる事態に見舞われることも…。
本の重版コントロールは出版社にとってすごく重要なんですね。