本好きなら思わず見てしまうページの1つに「奥付」があります。奥付とは本の最後の方のページにある、書籍情報が書かれているところです。
ここには本のタイトル、発行日、何刷りか、著者、印刷会社、ISBNなど、いろいろなことが書かれています。
この奥付にはたまに、「発売元」と「発行元」が分かれて書かれていることがあります。いったいどんな違いがあるのでしょうか?
取次の口座を持っていないと本を広めるのが大変
まずは結論から。取次との口座を持っている会社のことを「発売元」といい、本をつくって発行する会社のことを「発行元」といいます。
出版社は本の中身をつくってから、印刷会社に印刷をお願いします。そこから取次会社にお願いして、書店まで本を運んでもらって流通はひとまず完了。
ここで肝心なのが「取次会社」に口座を持っているかということ。
出版社は本の流通手段を自社で持っていないので、取次会社に依頼をします。しかし、この取次会社との契約をするのがけっこうハードルが高い。
新しい出版社が取次との取引をスタートさせるのは難しい上に、取引条件(仕入れ正味や部戻しなど)がなかなか厳しいんですね。
つまり、いまあなたが起業して新しく出版社を開いたとしても契約条件が厳しいか、そもそも口座をつくることすらできないかもしれません。
「取次に口座をつくらなくても、直接書店と取引すればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、それはかなりの困難を極めます。なぜなら、全国にある書店の1店舗ずつと契約をして本を届けないといけないからです。この方法は相当なコストになるので、小さな出版社にとっては現実的ではありません。というか、ありえません。
そこで出てくるのが「口座貸し」です。
取次口座を持っているのが発売元、本をつくっているのが発行元
「口座貸し」とは、取次との契約でつかっている口座を他の出版社に貸してあげることをいいます。
だから、新しくできたばかりの出版社は他の出版社に口座を貸してもらうことになります。
口座貸しをする会社は、手数料をとります。
口座を持っている出版社のことを「発売元」といい、口座を借りて本を出す出版社のことを「発行元」として区別しています。
口座貸しをする会社が持つ役割は主に以下の4つに分けられます。
- 取次との交渉や折衝を行ってくれる
- 書店からの注文が入ったときに、取次に本を出荷してくれる
- 返品された本を管理してくれる
- 取次や書店への営業活動・販促活動を行ってくれる
よく耳にするのが口座貸しを行っている星雲社という会社です。
星雲社は自社で編集などを行うことはなく、取次会社との取引口座を持っていない中小の出版社から流通を委託されて、業務を代行しています。
こうした機能があるからこそ、小さな出版社からも多様な出版物が生まれるのですね。