僕はこれまで色んな英作文の本を試してきました。定番の『瞬間英作文』もやりましたし、受験英語向けの『英作文が面白いほど書ける本』もやりました。
その中でも、特に「これは1つの完成形かもしれない」と感じたのが『+足すだけ英会話トレーニング』という本です。
本の内容と使い方を交えながら、くわしくレビューしていきます。
パーツを少しずつ足していく英作文
『+足すだけ英会話トレーニング』の最大の特徴は、「パーツを少しずつ足していくことで長い英作文が作れるようになる」ということです。
英作文はある程度短い文であればそこまで苦労せずに作れます。たとえば、 I went to the library. とかは中1レベルなのですんなり作れるはず。
しかし、少しでも英文が長くなると、英作文のハードルは途端に上がります。
たとえば、本書の表紙にも紹介されている以下の文をいきなり作るのはそこそこ厳しいはず。
It would probably be difficult for most young people to live without a smartphone.
しかし、じつはこの英文もパーツに分解してみると決して難しい表現ではないことがわかります。
- 【ベース】It would probably be difficult
- それはおそらくむずかしいだろう
- + for most young people
- ほとんどの若者にとって
- + to live without a smartphone
- スマートフォンなしで生活することは
最初からいきなり長い英作文を課されると心理的な抵抗が大きく、挫折しやすいものです。しかし、本書では4語程度の短い英文から始めるので、最初のハードルが非常に低いです。
長い英文を分解して、1つ1つの表現を組み合わせることで、最終的に長い英文が作れるようになります。当たり前の話なのですが、この着眼点で作られた英作文の本は今までありませんでした。
この本のやり方を実践すると「気づいたら長い英文が作れる(話せる)ようになってた!」という実感を得ることができるので、英文を作るのが俄然楽しくなります。
ちなみに、本書の対象レベルは英語中級者です。具体的には英検2級〜、TOEIC500点〜の人を対象としています。
文法や単語の基礎知識がないと本書はむずかしいので、まずは初心者向けの英作文の本で学習するのが良いと思います。おすすめは『NOBU式トレーニング』です。レビューは以下の記事をどうぞ。
英文が極めて実践的で、学びがある
英作文の教材にありがちなのが「英文の内容が陳腐すぎて面白みがない」ということです。
英作文の教材でおそらく最も売れている『瞬間英作文』は、レイアウトなどはシンプルで見やすいのですが、いかんせん英文の内容が無味乾燥なので、飽きやすいという欠点があります。
しかし、『+足すだけ英会話トレーニング』ではニュース記事でも使われるような内容・表現が満載なので満足感があります。生活、自然、スポーツ、政治外交、経済などジャンルも非常に多彩です。
以下は本書の【目次】ですが、これを見てもらえば内容の面白さが伝わるはず。
第一章:社会一般・生活/国内 「国内外から5千万人の人々が、毎年日本の古都京都を訪れる」 ほか
第二章:環境・自然 「名古屋ではこの冬、平年より52日遅い初雪が降った」 ほか
第三章:社会一般・生活/海外 「アムネスティ・インターナショナルは、イギリスのロンドンに本部を置く、活動的な人権団体である」 ほか
第四章:スポーツ・文化 「長らく行方不明だったレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画がニューヨークのオークションで、約4億5千万ドルで売れた」 ほか
第五章:政治・外交 「首相は、拉致問題は自らの政権の最優先事項だと繰り返し述べてきた」 ほか
第六章:事件・事故 「たくさんの人が、富士山上空の夜空に火の玉のような物体が点滅するのを見た」 ほか
第七章:医療・健康 「75歳以上の運転者は、認知機能検査を受ける必要がある」 ほか
第八章:経済 「パソコンの世界の出荷量が、2019年に7年ぶりに増加した」 ほか
こうした例文を作ることで英語力が上がるのはもちろんですが、「アムネスティ・インターナショナルってロンドンが本部なんだな」とか「パソコンの世界の出荷量が増えたのはきっとコロナの影響だろうな」といった学びを得ることができます。
ちなみに、この本はネイティブスピーカーの英文校正(英文チェック)も入っているので、文法的に正しいことはもちろん、自然な英語表現を身につけることができます。
例文が5つ区切りで学習プランが立てやすい
どんなに内容が良くても、構成が良くないと学習しにくいものです。できれば、例文が一定数に区切られていたほうが学習計画が立てやすくなります。
本書は合計100の例文が、5つごとに区切られています。つまり、「1日5例文ずつやって、20日間で1冊やり終える」という感じで学習計画を立てやすいというメリットがあります。
また、5つの例文を終えるごとに【Review ここまでの復習】というセクションがあり、そこでは過去にやった5つの例文を英会話の形式で復習できるようになっています。
英作文はやりっぱなしだとなかなか身につきません。しつこいくらい反復を繰り返すことで、初めて血肉となります。
その観点からいうと、本書の【ここまでの復習】というセクションはありがたいかぎりです。自分で復習のプランを立てなくても、本書を進めるなかで自然と復習ができる仕組みになっています。
この本で英作文の練習を積み重ねると、英会話も上達します。たとえば、QQ Englishのトピックカンバセーションなども活用できるようになるので、オンライン英会話との相乗効果も期待できます。
音声だけのトレーニングもできる
本書は音声も非常に工夫がこらされています。一般的な英作文の音声は【日→英】で吹き込まれていますが、本書は一味違います。
音声の構成は以下のとおり(CDではなく、パソコンかスマホにダウンロードします)。
● 本編(1〜100)の例
【日本語】① 旅行客が京都を訪れる
【英語】① Kyoto attracts tourists.
【ポーズ】 英語で言ってみよう
【英語】① Kyoto attracts tourists.
【ポーズ】 英語で言ってみよう
【日本語】① 旅行客が京都を訪れる
【ポーズ】 英語で言ってみよう
こんな感じで、何度も自分の口で英語を言ってみる機会が訪れます。音声があるおかげで一定のペースが保てるので、学習スピードを速めることにも役立つでしょう。
ただ、学習の初期段階はこの構成でもいいと思いますが、個人的には【日→英】の音声も欲しかったです。そのほうが英作文を高速で周回できるようになるので。欲張りな話ですが、改良の余地があるのかなと思います。
もう少し文法の解説が欲しかった
例文の内容や構成は文句なしですが、もう少し文法や語彙の解説が欲しかったというのが正直なところです。
本書は1つの例文ごとに右ページに少しだけ文法の解説や知識の紹介などが載っています。ただ、もう少し詳しいと良かったなーと思います。
これも「欲を言えば」の話ですが、本書のレイアウトは余白がたっぷり取ってあるので、せっかくならそこに解説を増やして欲しいところです。
少し長めの英作文を学びたい人におすすめ
本書は「瞬間英作文とかで短い英文は作れるようになったので、もう少し長めの文を話せるようになりたい」という人に向いています。
記事のなかで紹介したように、1つの例文は長めで内容も濃いので、英会話の幅を広げるという意味で、本書は役立つはずです。
『+足すだけ英会話トレーニング』という書名なので、基本的には英会話にフォーカスを当てていますが、英作文(ライティング)にも大きな効果を発揮すると思います。特に英検準1級〜1級の英作文対策にはピッタリかなと。
これまで使ってきた英作文教材の中でもトップを争うレベルで「買ってよかった」を思える本です。ご自身の英語レベルと合致しそうであれば、ぜひ本書を試してみてください。