もし自分が体の自由を一切奪われ、自由に歩くことも会話することも書くこともできなくなったらどうなるか?
この本を読むと、そんな究極の質問を自分に問わずにはいられなくなります。
今回紹介するのは「車椅子の物理学者」として世界的にしられるスティーブン・ホーキングの伝記本です。
単語数が制限されている洋書なので、非常に読みやすい1冊でした。
「あと数年の命」余命宣告されたホーキング博士
さて、まず大前提として、スティーブン・ホーキング(以下、ホーキング博士)とは何者か?という点についてまとめておきたいと思います。
- ・オックスフォード大学、ケンブリッジ大学で研究を行う
- ・宇宙のブラックホールに関する研究で一躍、有名に
- ・『ホーキング、宇宙を語る』という本が、世界的ベストセラーに
- (全世界で1000万部、日本110万部を超える)
- ・1963年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症する
- ・「車椅子の科学者」と知られる
- ・2018年3月14日、76歳で死去。
かなりざっくりとした紹介ですが、ホーキング博士について主だったポイントについてまとめるとこんな感じです。
宇宙理論は深入りすると大変(というより、むずかしくて深入りは不可)なので、ここでは置いておきましょう。
歩行も筆記も会話も奪われたとしたら…
ここで注目したいのは、やはり筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気についてです。
ALSというのは全身の筋肉が少しずつ衰えていき、やがて歩くことも話すこともできなくなる原因不明の病気です。
ホーキング博士は1963年にALSと診断されました。当時は、ALSについての研究もほとんどなかったようで、なんと「余命わずか数年」と医師から診断されています。
The Doctors told Stephen, “You’re very ill and we think you will only live for a few more years”
医師たちはスティーブンに「重い病気で、おそらくあと数年しか生きられないでしょう」と言った。
余命宣告とはなかなか残酷なものです。医師はよかれと思っていうのでしょうが、宣告されたほうはただ絶望しかないでしょう。
しかし、ホーキング博士はその宣告を前向きに受け止めていたようです。
When I knew that I had it, there were a lot of things I wanted to do.
病気になって、やりたいことがたくさんあることに気づいた。
たしかに、余命宣告には負の側面だけではなく「残りの人生、なにしようか」と考えさせる前向きな側面もあるのかもしれません。
いずれにせよ、ここで注目すべきはホーキング博士の姿勢です。博士は病気になって字を書くことすら難しい状況に陥りましたが、それでも研究を続けました。
当時、ALSという病気は発症から5年ほどで死に至ると言われていましたが、結局ホーキング博士は5年どころか、その後50年以上も生き続け、研究を続けたのです。
最終的にホーキング博士は喋ることもままならなくなり、重度障害者用意思伝達装置を使っていました。
ついつい自分事に置き換えて考えてしまうんですが、「書くことも喋ることもできなくなったらどうなっちゃうんだろう?」と自問自答してしまいます。
果たして、そんな状況で何かをやろうと思えるのか。そんな気力が湧いてくるのか。
好きなことがすべてを忘れさせる?
この本を読んでどう感じるか。ありきたりではありますが、僕は「障害があってもここまで意欲的に物事に取り組めるホーキング博士の姿勢」に心を打たれました。
圧倒的なハンディキャップがあっても「とにかくやりたい、知りたい」という熱意があれば、そんなこと関係ないんですよね。
それと同時に、自分が心から興味があることや好きなことなら、どんな障害でも超越できるものなんだなとも感じました。
障害を乗り越えることの凄さはもとより、自分が夢中になれることを見つけることが人生の幸福度を大きく決定づけるだろうな、と痛感させられました。
ある程度ホーキング博士のことを知っている人にとっては、内容が少し平坦に感じられるかもしれませんが、非常に読みやすい1冊でした。
Penguin Readers は表紙デザインも良い感じで、イラストも豊富なのでおすすめです。