僕はアメリカ政府が舞台の映画がけっこう好きで、そこで描かれる駆け引きとか人間関係とか、誰にも明かされない裏の世界みたいなストーリーがあると食いついてしまいます。
特に大統領とかホワイトハウスに絡む話題だとなおよし、という感じです。
今日はアメリカ大統領とそこに絡む警察、そして犯人の”逃亡”を描いた作品 “The President’s Murderer”をご紹介します。
“The President’s Murderer”のあらすじ
刑務所を脱走した囚人と、それを追いかける警察官を描くところからストーリーは始まります。
囚人が犯した罪は「大統領の殺人」。彼は大統領を殺した罪で投獄されていたのですが、逃げ出したというわけです。
なんとか警察の追跡を振り切ったものの、彼の身は常に追われる存在。しかし、行く先々では、なぜか彼の味方をする住民が多く、彼は食べ物をもらったり、洋服を与えてもらったりするのです。
これが、物語の大いなる伏線となります。
彼は警察に追われているのに、なぜ住民は彼を助けるのか?そして、なぜ彼は逃げるのか?
その真相には大きな裏側の事情があったのでした。
じつは彼は真犯人ではなく、新しい大統領が仕立て上げた犯人にすぎないのです。
大統領の恣意で犯人に仕立て上げれた彼は、無事に逃げ切ることができるのでしょうか?
逃げる犯人と、捜査する警察。場面の切り替わりがスピーディで良い
この作品の主人公は犯人、そして警察官です。
犯人が逃げるシーンの描写と、警察が捜査をする描写で場面が切り替わります。この切り替わりが良い分量で行われるので、倦むことなく読み進められます。
そして、警察側の人間関係も上手く描かれているのが良いですね。主人公格である警察官 Felix には高圧的な上司がいます。その上司はどうやら大統領とつながっている様子。
Felixは自分が思い描く捜査方法があるものの、それを上司に伝えても否定されるばかり。つまり、上司のやり方に従わざるを得ないわけです。このジレンマがよく描かれていると思いました。
真犯人は別にいるのではないか?と徐々に思わせる展開
刑務所を脱走する犯人が最初に出てくるのですが、最初の段階では当然「こいつは悪人だ」という意識で読み進めます。
ただ、話が進んでいくうちに「もしかして、こいつは真犯人じゃないのでは?本当は良い奴なんじゃないか?」と思わせるストーリーが展開されます。
その、良い意味での疑惑が、ストーリーの後半になって明らかになる。それが、この作品の読みどころだと思います。
なんでしょうね、脱走した囚人を悪者に見えないようにする描写の上手さ、みたいなのがあるのかもしれません。
結末はあっけなく、続編が作られるべきエンディング
この手のサスペンスものは、言ってみれば結末が一番大事だったりします。いわば、真犯人は誰かのか?という部分です。
この本については、追われている犯人の結末はあっけなく、そして、誰が真犯人なのかもわからずにストーリーは終わってしまいます。
まあOxford Bookwormsの紙幅で完成された作品を期待するのも間違っているのかもしれませんが…。
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