英語で記事や論文を書いたりメールを送ったりする人にとって、英語ライティングの技術はどうしても必要になります。
また、英検や大学受験で英作文対策が必要という人も多いと思います。
僕はかれこれ10冊近く英語ライティングの本を読んできましたが、そのなかで最もおすすめできるのが『竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本』です。
くわしくレビューしていきます。
受験用の英作文参考書だが、すべてのライティング学習者に
この本は大学受験用の参考書という位置づけです。
そのため、本屋に行って語学書コーナーには置いてない可能性が高いでしょう。ほとんどの本屋では大学受験用のテキストは別の売り場ですからね。
「こちとら良い大人なんだから、いまさら大学受験の参考書なんてダメでしょ」と思う人もいかもしれません。しかし、この本はまったく侮れません。
本書は受験を想定しながらも、ネイティブに対して使っても違和感のない英作文を学ぶことができるからです。
そのため、受験用の英語でライティング教材でありながら、学生はもちろん、社会人の実務でも大いに役に立つ内容になっています。
その証拠に、この本のチェックには複数のアメリカ人、オーストラリア人、イギリス人が参加しています。
だから、いわゆる”使えない受験英語”ではなく、おおいに使える英語を学ぶことができるわけです。
重要なことは、受験用だからといって避けるのではなく、受験用テキストならではの丁寧でわかりやすい解説をありがたく使わせてもらうことだと思います。
他の英作文の本と何がちがうのか?
さて、この本が持つ特徴(この本を選ぶ意味)について見ていきましょう。
結論からいうと、この本は「解説が丁寧」で「解答例が複数」あって、「こう書いてはダメ!」という事例が載っているところに素晴らしさがあります。
- ・解説が丁寧
- ・解答例が複数ある
- ・やりがちな英文のミスが載っている
解説が丁寧で、いろいろな書き方が学べる
英語ライティングの本のなかには、模範解答だけを示して、ろくに解説してくれない本もあります。
それだと「なぜ自分の解答ではダメなのか」「なぜその解答例の英単語を使うのか」といった細かい部分が理解できません。
その点、本書はこちらがミスしそうなポイントを想定したうえで、細かい文法解説を載せてくれます。
たとえば enough という単語の使い方について、明快でわかりやすい解説が以下のように書かれています。
英作文をしていて、「enoughって名詞を修飾するときと形容詞(副詞)を修飾するときで語順が変わるの?」という疑問を持ったときにこの解説を読んで、非常にスッキリしました。
enoughが名詞を修飾する場合、名詞の前でも後ろでもよいが、(中略)enoughが形容詞や副詞を修飾する場合、必ず〈形容詞・副詞+ enough〉の語順になる
Our car is not big enough[ ✖ enough big ] for all of the suitcases.(「うちの車は、そのスーツケースが全部入るほど大きくない」)
英作文の答えはひとつじゃないから、解答例が複数あるのは嬉しい
英会話も同じですが、なにかを伝えるときの表現方法はひとつとは限りません。
わかりやすい例だと、たとえば「駅までの道を教えていただけませんか?」という聞き方も以下のように複数あります。
- Could you tell me how to get to the station?
- Would you tell me way to the station?
英作文をしていても、あなたが書いた英文と解答例が同じになるとは限りません。
もしあなたの書いた英文が仮に合っていたとしても、解答例が一つしかないと正解なのかどうかわかりませんよね。
それを踏まえて本書では、1つの問題に対して、解答が2つ以上用意されています。「こんな書き方もあるよ」ということが、明確にわかるわけです。
さらにいうと、文節ごとに解答例があって、その解答例が3つも4つも書かれていることがあります。
たとえば、以下の例題について見てみましょう。
世界には、生きていくのに十分な食物さえ買うことができずに、飢えのため死ぬ人々が何百万人もいます。
この問題に対して、まず「飢えのため死ぬ」という英文の解答例は以下のとおりです。
・starve
・are starving
・die of hunger
・are dying of hunger
- ・「いま〜しつつあることを強調するなら進行形を用いる」
- ・starveだけで「死ぬほど飢える」の意味だから、to deathはなくてもかまわない
- ・また、be starvedという形は、アメリカ英語の口語で、「とても腹が減った」か、be starved of〜で「(愛・お金など)が不足している」の意味
- ・die of hunger[starvation]の代わりに die from hunger[starvation] も使われることがある
- ・die from〜ではおもに「〜」に「間接的原因」がくることが多く、「〜がもとで死ぬ」の感じ
いかがでしょうか。「飢えのため死ぬ」という表現ひとつのために、これだけの紙幅を割いて解説をしてくれるわけです。こんな丁寧なライティング本、なかなかお目にかかれません。
特に嬉しいのは、強調したい内容ごとに解説があることです。これは、自分で英作文をするときにも大いに参考になるでしょう。
日本人がやりがちな「こう書いてはダメ!」という誤答例がある
この本の最大の特徴といっていいかもしれませんが、誤答例まで記載されています。
これは、受験生の答案として典型的な誤答例だそうで、この誤答を見ることで自分の悪いクセや英文法の捉え方がわかるようになるはずです。
なので、まずは問題文だけを見て解答してみて、自分がその典型的なミスを犯していないかチェックしてみるのがおすすめ。
これを繰り返すと、自分のどこがいけないのかが掴めるようになります。
「英作文が面白いほど書ける本」をおすすめできない人
個人的には非常に強くおすすめしたい英作文の本ですが、向かない人がいるのも事実です。
- ・ビジネスに特化したライティングを学びたい人
- ・TOEIC550点以下の人
- ・あっさりとした解説が好きな人
あくまでも内容は受験生向けなので、大学の過去問を使った文章が多くなっています。
そのため、ビジネスライティング(Eメールの書き方など)をこの本から学ぶことはむずかしいでしょう。あくまでも英文の書き方にフォーカスを当てている本です。
また、文法の解説があるといはいえ、初歩的な文法を理解していないとむずかしいと思います。
ちなみに僕が本書をやっていたころの英語レベルはTOEIC650点程度、Versant44点でした。
解くのはむずかしいけど、解説を読むとスッキリ納得できるという負荷がちょうど良かったです。
構成がわかりやすく、使いやすい
この本は、各章でなにを学ぶのかが明確でわかりやすいのも大きなメリットです。
たとえば第一章は以下のような内容となっています。
- 【第一章 主語の決定】
- 原則1 〜が増えている
- 原則2 〜が少ない・少しある
- 原則3 〜な人が多い・いる
- 原則4 〜な人/者は
- 原則5 「一般論」の主語
- (以下略)
英語のライティングは、ある程度決まった型を覚えて、それを自分の英作文に生かしたほうが効率的です。
だから、ある程度の型(法則)みたいなものを習得したほうが早いし、負担が少ないわけです。
この本なら集中的に同じくくりで英作文の練習を行うので、効率的にライティング力が身につきます。
ちなみに、同じ竹岡先生の本では『ドラゴンイングリッシュ』という名著もあります。こちらも素晴らしいです。