本屋に行くたびに英語の参考書を買ってしまい、そのたびに後悔をする人は多いと思います。
僕もその一人なのですが、先日買った『高校生からはじめる「現代英語」即効!伊藤サムの反訳トレーニング』が非常に良くて、久々に「これはキタ…!」と思える出会いでした。
反訳トレーニングの効果と、具体的なやり方について紹介します。
伊藤サムって何者?
まず気になった人も多いと思うので、著者の伊藤サムさん(以下、敬称略)についてかんたんに説明します。
伊藤サムは英字新聞社のジャパンタイムズ編集長を務めた人物で、現在はNHK『ニュースで英会話』、『高校生からはじめる「現代英語」』の講師を務めています。
ジャパンタイムズ時代、新人研修を担当することになった彼は、反訳トレーニングというプログラムをつくりました。
英語力にまだ不安があった新人たちも、反訳トレーニングをすることで英語力が目に見えて伸びたと言います。
記者たちは、英文テキストの日本語訳文を見て、英語の原文へと反訳します。あるいは英文記事でまねしたいものを切り抜き、覚えたい表現を何段階かに分けて塗りつぶしていきます。
まとまった量の表現を覚えたころ、はっきりと力が伸びたのが分かりました。記事を書く力・話す力はもちろん、英語力がバランスよく伸びて、安心して仕事を任せられるようになったのです。(本書P116より)
英字新聞の記者向けのトレーニングとして使われていたというのが、なんとも信憑性の高さを物語っていますね。
実際に効果があったのはいうまでもないですが、英語に必要なライティング、スピーキング、リスニング、リーディングといった技能をバランスよく伸ばせるのが、反訳トレーニングの大きなメリットと言えるでしょう。
反訳トレーニングでは日本語を英語に訳していく
前置きが長くなりましたが、そもそも反訳トレーニングとは日本語を英語に訳していく学習法です。
このトレーニングによって英語力を鍛えることができます。
英語で発信できるようになるためには、、まず単語・フレーズをしっかり覚えること(語彙力)、そして表現を文章として組み立てること(構文力)が必要です。この2つの力をきちんと身につけるためには、日本語訳からもとの英文を言える段階までトレーニングしてください。
英語の勉強で多いのが、テキストを黙読したり、英単語帳をただ眺めるというものです。
これらの勉強法は正直かなりラクなので、英語力が身につくまでに時間がかかりすぎます。というより、ほとんど身につかないでしょう。
反訳トレーニングは、英文を自分で作る学習法なのでかなり負荷がかかります。でも、筋トレと同じように自分に負荷をかけないと、英語力はなかなか伸びません。
ですから本書は「負荷をかけて、即効性のある英語学習法を試してみたい」という人におすすめします。
一方で、ラクして英語力を身につけたいと考えている人にはおすすめしません。
段階を踏んでレベルが上がるので、少しずつ学べる
「日本語を英語に訳すなんてむずかしすぎる」と思う人もいると思います。
でも、この本はスモールステップで少しずつレベルを上げてくれる構成になっています。そのため、少しずつ着実に英語ができるという実感を味わうことができます。
余談ですが、英語が上達しているという実感を味わうのは、英語学習を続けるうえで非常に大切なことです。
この本のやり方は、大きく分けて4つのステップに分けて反訳を進めていきます。本書の構成は以下のとおりです。
- ① 左ページに英語、右ページに日本語の対訳
- ② 単語とフレーズの穴埋め
- ③ 1文だけ反訳してみる
- ④ 全文の反訳
①左ページに英語、右ページに日本語という対訳になっている
最初は、左ページの英語を読んでざっくりと意味が取る練習をします。
この段階では、左ページの英語を読んで、右ページの日本語をチェックしながら進めていきます。わかりにくい英単語は左下ページで語句の解説もあります。
ここではひとまず文章全体の意味を捉えられればOKです。
②単語とフレーズの穴埋めで語彙力も鍛える
次に、英文の一部の単語が日本語になっているので、日本語の部分を英語に訳しながら読んでいきます。
ここは語彙力を鍛えることが目的なので、わからなければすぐに答えを見てOKです。わからないからといって時間をかけても意味はありません。
単語の穴埋めができたら、次はフレーズ単位です。単語よりも少しだけ穴埋めの箇所が長くなっています。
③ 1文だけ反訳トレーニングに挑戦してみる
次は、ニュースでよく使われる英文を1つだけ反訳するトレーニングです。
よく使われる言い回しなので、覚えておくと英語を読んだり聞き取るときにも役に立つでしょう。
なお、左側が日本語、右側が英語になっているので、赤シートを使って隠しながら進めると効率的です(ただし、赤シートは未付属。市販のものを使う必要あり)。
ここもわからないときはすぐに解答を見るようにしましょう。
④小分けにした文章で全文を反訳していく
最後に全文をすべて英語に訳すトレーニングに入ります。
ここでは付属の音声CDを使います。音声は【日本語の音声 → ポーズ → 英語の音声】という内容になっていますので、ポーズのところで英文を作って実際に発音をしてみましょう。
全文を訳すとはいっても、1〜2文ずつ小分けにして訳していくスモールステップになっています。
音声CDのポーズの時間が少し短いので、むずかしければ一時停止ボタンを押すようにしましょう。
内容がおもしろい。文章の長さと難易度がちょうど良い
実際にわたしが本書を使ってみた感じたのは、以下の3点です。
- ① 文章の長さがちょうどいい(長すぎず、短すぎず)
- ② 難易度がちょうどいい
- ③ 内容がおもしろい
①文章の長さがちょうどいい(長すぎず、短すぎず)
反訳トレーニングはただでさえ負荷が大きい学習法ですから、適度な長さの英文じゃないと長続きしません。
長すぎると挫折の要因になるし、短すぎると物足りないので、さじ加減が意外とむずかしいところだと思います。
この本の英文は120〜150語で作られているので、長さが非常にちょうどいいです。
②難易度がちょうどいい
難易度の感じ方は人それぞれちがうわけですが、TOEICスコア700点のわたしには非常にちょうど良かったです。
基本的には英文の意味は取れるけど、全体の2〜3割の英単語の意味がわからないレベルです。
英文を読んでみて、全体の意味がざっくり理解できるレベルじゃないと、この本はむずかしく感じると思います。
③内容がおもしろい
この本の英文は「NHKワールドJAPAN」で放送された内容をもとに、高校生レベルの語彙や表現に書き直されたものが使われています。
時事ネタやニュースが題材になっているので、勉強しながら教養や会話のネタも仕入れることができます。
わたしは架空の物語や意味のない英会話でつくられた英語教材に辟易しているので、この手の実用性がある英語教材が大好きです。
まったくの英語初心者には全然おすすめできない
たびたび説明しているとおり、日本語から英語に訳すトレーニングはそれなりに難易度が高いです。
そのため、基礎的な英文法がわからないという初心者の方にはおすすめできません。
少なくともTOEIC500点以上の人であれば、実際に英語力のアップに役立つ本だと思います。
本書「反訳トレーニング」のおすすめポイント【まとめ】
- ① 負荷はかかるが、効果は絶大
- ② 使い方がわかりやすく、流れに沿えばOK
- ③ スモールステップで上達を実感できる
- ④ 文章が長すぎず、短すぎずちょうどいい
- ⑤ ニュースが題材なので内容がおもしろい