僕はこれまで数多くの英語学習法を試してきましたが、今回読んだ『村上式シンプル英語勉強法』には「なるほど、こんな考え方もあったのか…」と驚かされることばかりでした。
というわけで、くわしくレビューしていきます。
この本は以下のような人におすすめ
- ▫何をやっても英語ができるようにならない
- ▫英語学習のモチベーションが下がっている
- ▫気軽に読めて、実践しやすい英語勉強法の本が知りたい
英語の技能ごとに勉強法が解説されている
僕がこの本を読んで、最初に「いいな」と思ったのが、英語の技能ごとに5つの章(チャプター)に分かれていることです。
- 本書の5つのチャプター
- ① 英語を読む
- ② 単語を覚える
- ③ 英語を聴く
- ④ 英語を書く
- ⑤ 英語を話す
構成がすごくシンプルでわかりやすいですよね。
こういうふうに分かれているおかげで「自分はいま英語のリスニングで悩んでいるから【英語を聴く】から読んでみよう」という感じで、目的別に読み分けることができます。
実際、僕もこの本を買ったときは洋書の読み方で悩んでいた時期だったので、【英語を読む】のチャプターを食い入るように読みました。
もちろん、最初から読んでもいいですし、途中から拾い読みする感じでも内容が理解できるようになっているので、読み方は自由です。
また、本書は文庫版なのですが、余白が多めに取られていて、見出しも多いので読み疲れが起きにくいと思います。
英語をとにかく読む。後ろには戻らない
僕が最初に驚いたのは【英語を読む】のチャプターです。そこには、なかなか強烈なことが書かれていました。
英文の読み方についてのポイントは2つです。
1つは、パラグラフ(段落)の先頭から読み始めたら、絶対に後ろへ戻らないということ。意味が分からなくても戻ってはダメ。そのまま読み進めます。
そして2つめはパラグラフの途中で息継ぎをしないということ。
なかなかスパルタ的で、厳しいやり方ですよね。もちろん、誰かにやらされるのではなく、自分に課すのでまったくは問題はないわけですが。
僕はこれを読んで「たしかに、こういう姿勢で大量に読みまくる時間は必要かもな」と感じました。
というのも、それまでの僕は英文や洋書を読むときに、わからない単語や文法が出てきたらその都度調べていたからです。
もちろん、それで知識はつきますが、肝心の「英語を読む練習」は全然はかどりません。むしろ、辞書やネット検索に時間がかかって嫌気が差してきます。
それだったら、とにかく戻らずに読みまくれば良い。多少わからなくても、強引に読み進める。こういうやり方を愚直にやり続けた人が、洋書をスラスラ読めるようになるのかもしれないと感じました。
僕はこのやり方を始めてまだ間もないですが、たしかに英文の正確な意味を理解するのはむずかしいです。でも「全体的にだいたいこういうことが書かれているんだろう」という感覚は掴むことができます。
そして、まずはこの程度の感覚と理解で良いんです。本書にもそう書かれています。
また、「最初は会話の多い探偵モノを読む」という解説も役立ちます。どんな洋書を選べばいいのか具体的な書名を挙げてくれているので助かります。
リスニングは”耳の筋トレ”である
リスニングを鍛えるためには、単語を覚えて文法の理解をして、内容に関する知識を身につければいい。もちろんそうです。
しかしどうでしょう。そこまで頑張ってやったのに、なかなか英語が聴き取れるようにならない。なぜなのか?本書に明確な答えが書いてあります。
ズバリ言いましょう。英語を聴く力、リスニング力は”耳の筋力”です。決して知力ではありません。
そもそも、英語と日本語では周波数が違うそうです。かんたんに言えば、英語は高周波の音、日本語の低周波の音。だから、日本人は英語を聞き取るのがむずかしい。
ではどうするか?繰り返しになりますが、耳を鍛えるのが正解ということになります。
英語が聴こえるようになるには、耳を鍛えて高周波を聴き取る力をつけるしかない。だから「リスニング力を身につけるために必要なのは勉強ではなく耳の筋トレ。そのとき使うのは知力ではなく筋力」なんです。
“耳の筋力”というがピンとこないかもしれませんが、結局のところ「身体に覚えさせることが不可欠」と理解すればOKです。
英語はスポーツに例えられることがありますが、野球選手がバットを何度も振るのと理屈は同じなのかもしれません。とにかく反復して、身体に覚えさせる。
知力で勝負するのに限界を感じた人は、耳の筋力を鍛えることで飛躍的にリスニングが伸びるかもしれません。
英語ライティングは「借りてくる」のが1番
英語を書くことについて、本書では英作文ではなく”英借文”という考え方が述べられています。
英作文ではなく英借文。つまりネイティブの書いたリポートやパワーポイントやEメールから、文章してをコピー&ペーストして自分なりにアレンジするんです。
英文ライティングというのは、英会話に比べると型が決まっています。だから、イチから自分で作るよりも、借りてきたほうが早い。そういうわけです。
そして、借りてきた英文を自分のテンプレートしてストックとしていけば、書ける英語のバリエーションはどんどん広がっていくというわけです。
「借りる」ということに抵抗感があるかもしれませんが、最初は誰もがマネから入るもの。お手本として使わせてもらうと考えれば、決して引け目を感じる必要はないと思います。
「英語を聴けるけど話せない」は当然のこと
スピーキングに関しても、ハッとさせられる内容で溢れています。
英語ネイティブと会話する場合、英語を聴くのは、どうしても相手のレベルがベースになり、それにこちらが合わせることになります。(中略)
しかし英語で話すときには、当然こちらの英語力がベースになります。つまり、聴くのは相手のレベル、話すのはこっちのレベル、こんな楽なことはありません。堂々と自分のレベルで、落ち着いて話せばいいんです。
「英語はそこそこ聴き取れるのに、話す英語のレベルは低くなってしまう…」という人は多いと思います。つまり、多くの人が【聴く力>話す力】ということ。僕も間違いなくそうです。
そこで多くの人が「聴くレベルと同じくらい、話すレベルも上げなきゃ」と考えるわけです。そして、話すレベルが上がるまで英会話レッスンを受けようとしない(昔の僕です)。
そうではなく、【聴く力>話す力】を後ろ向きに考えずに、それを当然ものとして受け入れればいいわけですね。
相手のレベルで聴き取りができるのであれば、あとは自分のレベルで話せばいい。こういうマインドで堂々としていれば、臆することなく英会話もできるはずです。
【総評】この本を読んだ感想
本書は、他の本にはあまり書かれることのない「とにかく読む」「とにかく聴く」ということが強調されています。
考え方によっては、スパルタ的で厳しいのですが、僕は長年英語の勉強をしてきて「たしかにこういう勉強のやり方を実践する時間も必要だな」と強く感じました。特に、英語を読む・聴くに関しては。
たとえば洋書を読むときは「内容がほとんどわからなくてもいいから、とにかく読め!」と本書には書かれているわけですが、頭で理解するよりも、大量に英語を身体に取り込むという作業によって、たしかに洋書は読めるようになります。
また、英語を聴くことに関しても「100%を目指さない」と書かれていて、これにも同感です。
これはTOEICや英検によって勉強をしてきた人にとっては受け入れがたい考え方かもしれません。なぜなら、英語の試験は内容を正確に聴いて答えないと得点にならないから。
でも実際のところ、100%聴き取れなくてもなんとかなるし「だいたいこういうこと言ってるのね」で済むことが大半です(ビジネスの重要な場面は別ですが)。
そもそも、完璧を目指すのってすごい苦しいんですよ。時間もかかるし、勉強がいやになります。
「ちゃんと内容を理解しなきゃ」と苦しんで英語を勉強する人にとって、この本は救いの1冊になり得ると思います。
一方で、この本には英語の勉強をするうえでの基礎学習のやり方について詳しく書かれていません。そのため、英語初心者の人が読むと面食らうかもです。
ただ、ある意味で英語学習を始める初期段階でこの本に出会えたら、英語力が伸びるスピードは格段に上がるかもしれません(相性が合えば)。