英語で「得る」と表現したい場合、get, obtain, gain, acquire など英単語がいろいろありすぎてどれを使えばいいのか迷うことが多々あります。
ポイントは「得るプロセスがどうだったか?」。ここに焦点を当てて英単語を使い分けるとわかりやすいと思います。
まずは、「得る」という意味を持つ英単語をチェックしつつ、それらの細かい意味やニュアンスを見ていきましょう。
なお、単語の意味・ニュアンス・例文については英語辞書『ウィズダム2』を参考にしています。
get → 物を手に入れることを表す一般的な単語
「得る」という意味で最も一般的なのが get です。
他の単語とちがって、手に入れる過程の努力や、入手がどれくらい困難か?という意味は特に含まれません。
「無料でもらう」「買う」「誰かにとってきてもらう」など幅広い場面で使われます。
とりあえず、英語で「得る」という意味を表したければ get を使っておけば(ニュアンスはともかく)相手に伝わるでしょう。
たとえば「許可を得る」という場合、『ウィズダム2』には以下の3つのパターンが例文として掲載されています。
- 「許可を得る」
- ・get permission → 過程はわからないが、許可を得る
- ・obtain permission → 「一定の努力」を包含
- ・secure permission →「ようやく許可を取り付ける」感じ
get を日本語のニュアンスで表すなら、まさしく「得る」という感覚が近いかもしれません。
というのも、冒頭で示したとおり「得る」という言葉には、努力などの過程がニュアンスとして含まれないから。「給料を得る」「知識を得る」という場合、単純に「それを得たよ」という事実を伝えているだけで、得るまでの過程はあまり見えてこないですよね。
obtain → 一定の努力を払って獲得する
obtain には「一定の努力を払って獲得すること」というニュアンスがあります。日本語で表現するなら「獲得する」「取得する」という感じです。
obtain はかたい表現なので、会話でもおもに get が使われます。
例文はどうでしょうか。たとえば、起業している人が努力して銀行から資本金を得たとしたら、それは obtain funding(資金を得る)と表現できます。
obtain を使って表現されている文をみたら「なるほど、一定の努力で手に入れたんだな」というニュアンスを感じ取ればいいわけです。
gain → 入手困難なものや特別な権利などを努力して獲得する
gain は obtain よりも大きな努力や競争のすえに得られるというニュアンスが含まれます。つまり、 gain > obtain ということです。
また、gain には「次第に増えていくことを暗示する」というニュアンスも含まれます。
たとえば、gain strength (力をつける)という表現の場合、その力が少しずつ増えていくことを暗示しているわけです。
secure → 入手困難なものを確保して自分のものにする
secure はこれまでの get や obtain とは大きく異なります。それは「入手困難なもの」というニュアンスが含まれることです。
入手困難なものとは何でしょうか?『ウィズダム2』には以下のような例文が紹介されています。
- ・secure a lasting peace 恒久の平和を実現する
- ・secure more seats in the election 選挙でより多くの議席を確保する
この2つの例文はとてもわかりやすいと思います。
まず secure a lasting peace ですが、戦争のない「平和」な世界というのは入手困難ですよね。日々、どこかの国で戦争や紛争が起きているわけですから、そんな状況で得られる平和にはまさしく secure という表現が向いています。
そして、選挙で議席を得ることも困難を極めます。選挙資金を投じて、党の偉い人に気に入られて、国民からも人気・支持を獲得しないといけません。これだけのハードルを超えて得られる議席には、まさしく secure がぴったりです。
acquire → 時間をかけ、手を尽くしてやっと手に入れる
acquire は「時間をかけてやっと手に入れること」というニュアンスです。
他の「得る」という英単語と大きくちがうのは、【財産・権利・資格】などの「主に高価または入手困難なもの」に対して使われるということです。
いちばんわかりやすいのは、「会社を買収する」というときに使われる acquire です。
- The company was acquired by ABC in 1990.
- その会社は1990年にABC社に買収された。
会社を買収する=得るというのは、かなりの困難が伴います。TOBを使った敵対的買収であれ、融和策で経営陣を同意させる友好的買収であれ、会社を手に入れるのは大変なことです。さらに、会社の規模によりますが、買収には数十億〜数百億円という高価なお金が必要になります。
このような努力の背景は入手困難な状況の中で手に入れるときは、acquire が使われます。
ちなみに、acquire の名詞は acquisition という単語です。「merger and acquisition =(企業の)合併と買収」、いわゆるM&Aもセットで覚えておくと、理解が深まると思います。
derive → 人が物事から満足感・利益・知識を引き出して得る
derive という単語には「引き出して得る」というニュアンスです。そのため、ここまで紹介してきた英単語とは含まれる意味が異なります。
derive 単体ではなく、derive A from B[doing] という形で用いられます。
『ウィズダム2』の例文がわかりやすいので紹介します。
- derive energy from the sun
- 太陽からエネルギーを得る
- derive great pleasure from working
- 働くことで大きな喜びを得る
上記の例文はいずれも「対象物から引き出して得る」というニュアンスです。
「エネルギーを太陽から引き出して得る」、「喜びを仕事から引き出して得る」というふうに、対象物にはたらきかけたりして、そこから得られるものを暗示しています。
「得る」を明確に使い分けるのは難しい…
- 「得る」という意味の英単語
- ・get → 物を手に入れることを表す一般的な単語。おもに口語で使う
- ・obtain → 一定の努力を払って獲得すること
- ・gain → 入手困難なものや特別な権利などを努力して獲得すること
- ・secure → 入手困難なものを確保して自分のものにすること
- ・acquire → 時間をかけ、手を尽くしてやっと手に入れること
- ・derive → 人が物事から満足感・利益・知識を引き出して得ること
get が最も一般的であること、gain > obtain であること、secure は多大な努力で入手困難なものを手に入れること、などなど。このあたりを押さえておけばOKかなと思います。
ただ、日本語でも同じことがいえますが「得る」「手に入れる」「獲得する」「勝ち取る」「取得する」などの言葉を明確に使い分けるのはむずかしいですよね。それと同じで、英語でも明確な使い分けというのはネイティブでも難しいはずです。
個人的には、「コロケーション=言葉の組み合わせ」で覚えていくのが1番効果的だと思います(たとえば acquire a company = 会社を買収する、gain control = 支配権を得る、など)。