英語のリスニング学習を続けていると、”ある壁”にぶち当たることがあります。それは「英語は聞き取れるのに、意味がわからない」という悩みです。つまり、単語自体は聞き取れるけど、文や文章全体の意味が理解できないということ。
どうすれば英語を聞き取って、内容もしっかり理解できるようになるのでしょうか?
今回は僕の経験をもとに、聞き取れるのに意味がわからない原因、そして、それを解決するための英語学習方法をわかりやすく解説していきます。
まずは、考えられる原因をしっかりと突き止めましょう。そのうえで解決策を見ていくことで、確実にこの悩みは解消できます。
原因① 文の構造が理解できていない
英語は聞き取れるのに意味がわからない原因の1つ目は、文の構造がわかっていないということです。
文の構造というと色々な捉え方ができると思いますが、特に大事なのは「どれが主語で、どれが動詞なのか」ということです。
日本語の場合、助詞の「が」「は」が目印になるので主語が把握しやすいですが、英語の場合は単語の順番(並び)や前後関係で決まるので、理解しづらいんですよね。
英語のリスニングで会話文や文章を聞いて単語が全部聞き取れたとしても、どれが主語でどれが動詞なのかがわからないと、文の意味を理解することはできません。
言い替えれば、英語を聞いて主語と動詞がきちんと理解できて、頭の中で文を組み立てることができれば、文章全体の意味も理解できるようになってくるはずです。
くわしい解決方法や勉強法は後で紹介しますが、文の構造が分かっていないという悩みは、文法の勉強や英文読解の勉強をすることで、大幅に改善することができます。
原因② 文や単語の聞き取りに集中しすぎている
考えられる原因2つ目は、「1つの文、1つの単語、それぞれに対する聞き取りに集中しすぎている」ということです。
リスニングで聞き取りに集中するのは当然なのですが、それが1つのことに対してフォーカスしすぎてしまうと、文章全体の意味を掴むことができません。
1文あるいは1つの単語に集中しすぎると、それを理解をするのに精一杯で次の文を全然聞いておらず、結果的に内容がほとんど理解できない状態が生まれてしまいます。
つまり、 1つの文や単語の聞き取りに集中しすぎると、他の部分を聞き損ねてしまう可能性が高くなるのです。
これを解決するには、広い視野で、文章全体の意味を掴むように英文を聞くようにしましょう。
前のめりで聞くというよりも、1歩引いた感じで、全体を見渡すようなイメージでリスニングをするといいいと思います。
と、口で言うのは簡単ですが、これはなかなかすぐに実践&達成できるものではないと思います。
リスニングで英文や会話文を繰り返し聞いたり、勉強していくうちに、少しずつ文章全体を引いてみて、聞き取る内容を理解するという力が養われていくと思います。
原因③ 前から順番に理解する能力が不足している
聞き取れるけど内容が理解できない原因の3つ目は「英文を前から順番に理解できていないこと」が考えられます。
そもそも、日本語と英語では語順が異なりますし、文の組み立て方や柔軟性もちがいます。
日本語は単語の順番を並び替えても意味が通じますよね。たとえば「僕は今日、ランチで煮魚定食を食べました( I ate a simmered fish meal at lunch today. )」という場合。
これを「ランチで今日、煮魚定食を食べました僕は」という語順でも(不自然ですが)意味は通じます。英語の場合はどうでしょうか?「 at lunch today a simmered fish meal ate I 」 、これでは意味不明ですよね。
前置きが長くなりましたが、英語と日本では語順が違うということを念頭においてリスニングをする必要があります。英語を日本語と同じような感覚で後ろから前に訳すと、どうしても聞き取りが遅れてしまうのです。
そのため、英語の語順で前から順番に理解する練習をする必要があります。後ろから前に訳す(戻る)癖をなくすことで、英語を聞き取って、内容もきちんと理解できるようになるでしょう。
こちらも後でくわしい学習方法紹介しますが、英語を語順どおり聞き取れるようになるには、音読やシャドーイングが有効です。
原因④ 文法や単語の知識が不足している
原因の4つ目は、純粋に知識不足です。
文や単語がきちんと聞き取れているからといって、文法や単語がきちんと理解 できているとは限りません。
文法の理解がリスニングでは不可欠
たとえば、to不定詞という文法があります。to不定詞には、 名詞的用法・形容詞的用法・副詞的用法というものがあり、同じ to不定詞でも、文の前後関係によって訳し方(意味)が変わってきます。
そのため、to不定詞(to + 動詞の原形)がきちんと聞き取れたとしても、それが形容詞なのか、副詞なのか、あるいは名詞として作用するのかがすぐに分からないと、当然内容も理解することができません。
例を挙げてみましょう。以下の1文は、イギリスの新首相リシ・スナク氏について報じたCNNニュースからの引用です。
Britain’s new prime minister, Rishi Sunak, the first person of color and first Hindu to hold the position, [is] clear on why he was chosen to lead.
「CNN ENGLISH EXPRESS 2023年2月号」P64より引用
ここに出てくる、to holdという不定詞があります。これを聞き取れたとしても、to不定詞のどの用法なのかが瞬時にわからないと、内容を理解できるようにはなりません。
ちなみにこの to hold は、直前の first Hindu という名詞にかかるので、to不定詞の形容詞的用法です。【first Hindu to hold the position = (イギリス首相に)初めて就任したヒンドゥー教徒】という意味になります。
※ hold the position = 〜の地位に就いている
多義語や熟語、どれくらい知ってる?
もう1つ単語についても同じことが言えます。1つの単語、あるいは熟語を取っても、その表現には色々な意味があります。そのため、1つの単語につき1つの意味でしか覚えていないと、他の意味で使われた途端に理解ができなくなります。
たとえば、in office という熟語があります。in も office も、おそらく馴染みがあって、聞き取りもそこまで難しくはないでしょう。しかし、in office は「在任して、公職について」という熟語であり、この意味を知らないと、たとえ聞き取れたとしても、理解はできません。
他にも、deliver という単語があります。deliver と聞くと「デリバリー」から連想して「何かを運ぶ」というイメージが思い浮かぶと思います。しかし、deliver には「期待に沿う、職務を果たす」という意味もあり、これもこういった他の意味を知らないと理解ができないでしょう。
もう1つだけ例を挙げると、man of the people という意味が表現があります。
これも単語単位ではかんたんなので聞き取りはできるでしょう。しかし、 マンman of the people という1つのフレーズになると「大衆の味方、庶民の代表」という意味になるので、これも熟語の知識がないと意味が理解できないでしょう。
このように、文法や単語の知識が不足していると、たとえ聞き取れたとしても、内容を理解することはできません。
原因⑤ トピックの背景知識が不足している
原因の5つ目は、そのリスニングの内容に対する背景知識が不足しているということです。
これは想像しやすいと思いますが、たとえば完全な文系の人が、物理や化学に関する英文を聞いた時に、単語が聞き取れたとしても、背景知識がないので完全に理解することは難しいでしょう。
同じように、理系の人が政治経済の話題で単語が聞き取れても、背景知識がなければ理解はできないと思います。
この「トピックに対する背景知識の不足」が原因になっている人は意外と多いです。
これは、僕自身も何度か経験していて、英語をがんばって勉強してるし、単語や文法も問題なく聞き取れているのに、なぜか内容が理解できないということがこれまでに多々あったんですね。
振り返って分析してみると、単純に背景知識が不足しているのが原因だったことが何度もあります。
「がんばって勉強してるのに英語のニュースが全然読めない&聴き取れない…」 と凹んだ時期があって、自分なりに分析したら【そもそも背景知識を知らず、日本語でも理解できない内容の記事だった】という経験があります。
英語学習の前に、日本語で知識をちゃんとストックする必要があることを痛感😌 https://t.co/8EBdZNZ9ZG— あゆむ / 英語学習 (@Book_Baum) January 19, 2023
結局のところ、英語の勉強だけを一生懸命やっていてもダメで、ふだんからニュースを見たり、読書をしたりして、日本語でもしっかりと知識を取り入れていく必要があるということです。
トピックの背景知識不足が原因の場合、シンプルにその知識を吸収して身につけることができれば、英語の聞き取りと内容の理解もしっかりできるようになるはずです。
この原因に関してはわりとすぐに解消できると思うので、思い当たる節がある人はまずは背景知識の勉強していくのがいいと思います。
内容が理解できない時の解決策
ここからは「英語が聞き取れるのに、内容が理解できない」という人のための解決策・対策法を紹介していきます。
まずは、結論から。原因に合わせて、以下のいずれか3つ(あるいは全部)を取り入れることで解決に向かいます。
- リスニングで内容を理解するための勉強法
- ① 文法を勉強する
- ② 単語、特に多義語の知識を増やす
- ③ 音読、オーバーラッピング、シャドイング
① 文法を勉強する
さきほど紹介した原因を踏まえたうえで、内容が理解できない原因が文法にあると感じる人は、文法の勉強をしていきましょう。
まずは、一般的な文法書や文法の問題集を使うのがいいと思います。
文法の知識を身につけることで「何が主語で、何が動詞で、何が形容詞なのか」というのが理解できるようになります。
たとえば形容詞を例にあげると、最初のうち特に難しいのが後ろから前に修飾するタイプの形容詞です。これは現在分詞(〜ing)や過去分詞(〜ed)など色々な形がありますが、後ろから前に修飾するタイプの形容詞の理解が身につくと、前から順番に英語を聞いても、その語順どおり理解できるようになるので、聞き取りの理解が早まります。
文法を勉強することで得られるメリットは大きいので、まだきちんと勉強できていないという人は文法の勉強から始めてみるといいと思います。
② 単語、特に多義語の知識を増やす
リスニングで意味がつかめない原因が「単語の理解不足」にある人は、1つの単語に対して色々な語義があることを確認した上で、他の語義を確認していくといいと思います。つまり、多義語に強くなるということです。
たとえば、private という単語。僕たちがよく使う「仕事とプライベートを分ける」といった時のプライベートがまず最初に思い浮かぶと思いますが、private には「民営の、私立の」という意味があったりするんですよね。privateが多義語だと知っていれば、政治や経済のニュースで private が出てきたときには「民営の、私立の」という意味で使われる可能性が高くなるので、文章が理解しやすくなるでしょう。
このように、すでに覚えている単語の意味とは別に、複数の意味があることを確認した上で、他の意味を合わせて覚えていくようにしていくといいと思います。
複数の語義がある単語は、トピックや文章の前後関係で意味が決まってくるので、複数の単語の意味を理解した上で、文章を聞きながら、その単語が何を意味するのかというのを瞬時に理解できるように練習していく必要があります。
そのため、語義を覚えただけでは、リスニングができるようにはなりません。とにかく大量の文章や会話文を聞いて、瞬時に単語の意味を理解できるように練習していく必要があります。
③ 音読、オーバーラッピング、シャドイング
3つ目ですが、文の聞き取りに集中しすぎている人、あるいは前から順番に理解する能力が不足している人は、音読・オーバーラッピング・シャドーングを取り入れましょう。
音読・オーバーラッピング・シャドーングは、3つで1セットと考えるといいと思います。
音読もオーバーラッピングもシャドーイングもすべてて声に出して読んでいくことになるので、返り読みができなくなります。返り読みというのは、 1回読んだ文を前に戻って読み返し、どういった意味なのか、どんな文構造になっているかを確認する作業です。
返り読みは精読する際には必ずしも悪ではないのですが、リスリングにおいて、語順どおりに内容を理解する上では返り読みが大きな弊害になってしまいます。
そのため、ふだんの学習から音読やオーバーラッピング、シャドーイングで返り読みをなくし、順番どおりに読む癖をつけておくといいでしょう。
そうすることで英語を聞き取れるようになるし、 なおかつ内容の理解も文の順番どおりにできるようになります。
音読オーバーラッピング、シャドーイングは、リスニングだけではなく、リーディング力の向上にも繋がりますし、英語能力全体のアップ(4技能)の向上にも繋がりますので、非常におすすめです。
実際、僕も普段の学習は音読、オーバラッピング、シャドーイングをやっています。ここ最近は、CNN ENGLISH EXPRESS というCNNニュースを題材にした英語教材(雑誌)を使って英語の音読、オーバーラッピング、シャドーイングを行っています。
1つの文章に対して、音読10回、オーバーラッピング10回、シャドーイング10回という感じで、とにかく大量に英語を読む声に出して読む練習をしています。これをすることで、英語が聞き取れるけど、内容が理解できないという悩みはかなり改善できると思います。
まだ本格的にやったことがない人は、ぜひ取り入れてください。